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(2001.09.06.)

* 警察見張番だより第5号
***** もくじ *****

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第2回「警察見張番」総会 

     ● 開会のことば         (佐久間哲雄 )

     ● 刑事確定記録の閲覧について      (鈴木 健)

     ● 活動報告&活動方針          (山田 泰)

     ● 閉会のことば             (北川 善英)

     ● 総会に参加して             (佐々木玲吉)

     ● 特別講演                (寺澤 有)

     ● 事務局より

     ● 編集後記

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● 開会のことば         (佐久間哲雄 )
「警察見張番」が旗揚げして一年経ちました。この間の活動につきましては、後ほど山田
事務局長からご報告致しますが、ご支援いただいた多くの会員の方々、毎月の役員会で熱
心な議論を展開された役員の方々、こまごまとした雑務を処理して下さっている事務局の
方々にお礼申し上げます。
 
神奈川県警渡邊泉郎本部長を主犯とする覚せい剤不正使用のもみ消し事件の刑事確定記録
の閲覧報告書の作成に総力を挙げて取り組んでおります。詳細は後ほど鈴木弁護士からご
報告致しますが、横浜地方検察庁による確定記録のマスキングが予想外に少ないのに驚き
ました。手前味噌になりますが、検察庁は私たち「警察見張番」を信頼し、期待しておら
れるのかも知れないと思っています。
 
例会での参加者のご意見、役員会の議論そして刑事確定記録の閲覧作業などを通じ、私は、
「警察見張番」が順調に滑り出したと思っています。将来、立派な大木のような組織に成
長する素地は出来たと考えております。

会社の社風を変えるには10年かかるといわれます。私たち「警察見張番」が相手にして
いるのは、権力機構の中の典型である警察であります。明治政府以来100年になる権力
機構の体質までも変えてしまおうという運動です。私たちは、腰を落とし慌てずさわがず
着実に前進していきましょう。
 
神奈川県警の病巣にピタリと照準を定めた作業を続けていきます。第一線で苦労を重ねて
いる警察官が胸を張り誇りをもって職務に取組める神奈川県警察を一日も早く実現させる
ために、市民の立場から運動を展開します。
 みんなで頑張りましょう。

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● 刑事確定記録の閲覧について      (鈴木 健)

神奈川県警本部長などの
犯人隠避・証拠堙滅刑事確定記録閲覧中間報告 


  2000年7月21日に立ち上げられた「警察見張番」の当面の活動のメインイベントとして、
県警組織の問題点・改革の方向などを考える素材とすべく、2000年10月16日、横浜地検に対
し、「神奈川県警本部長などの犯人隠避・証拠堙滅刑事事件」の確定記録閲覧請求を行った。
これまでの閲覧許可に関する先例から許可は困難とも思われたが、同年12月12日に閲覧が許
可され、今年の2月以降今日まで計10回の閲覧・メモ取り作業を行った。証拠標目の概要は
別に掲載される「開示記録一覧」のとおりであるが、今日までの作業で、我々が価値がある
と思われた資料については、ほぼメモ取り作業が終了した。
  閲覧の方針としては、まず弁護士が3人で手分けをして記録を読み込んでメモを取るに
ふさわしい箇所のピックアップ作業をし、それに従って他の役員なども協力してメモを取る
こととしたが、何分とも量が多いため、作業はそう簡単ではない。筆者も3冊分の記録を担
当したが、他者の担当部分についてはまだ情報交換できておらず、記録の全容を把握するに
至っていない。したがって、今回は全体の内容の報告までは到底することができず、今後開
かれる役員会においてこの資料をどのようにまとめ、会員や市民の皆さんに情報提供すべき
かを検討した後の次なる報告にご期待いただきたい。
           ◇
ここで、「神奈川県警本部長などの犯人隠避・証拠堙滅刑事事件」とはどのような事件だっ
たかについてお忘れの方やよくご存知でない方のために、事件概要をおさらいしておく。

1 神奈川県警外事課警部補であった酒寄美久は、1996年9月頃から、飲食店で知り合った
A子と覚せい剤を使用するようになり、妄想も出現するようになっていた。12月12日にみず
から妄想にとりつかれて県警外事課当直に電話をして赴き、覚せい剤使用を自供した。腕に
は注射痕があった。

2 外事課長代理は、翌13日に監察官室長角田柾照、監察官永山洋右(いずれも被告人)に
通報し、角田は原芳政警務部長、渡邊泉郎県警本部長(いずれも被告人)に報告した。また、
宮田義隆生活安全部長(被告人)に、事後処理方法につき相談した。渡邊は、事件を公にし
ないよう、酒寄を懲戒免職でなく諭旨免職とするよう角田に指示した。

  宮田は角田の相談に対し「尿から覚せい剤が検出されなければ刑事事件として立件する
のは難しい」と答えた。そこで酒寄を外事課に引き渡し、市内ホテルに宿泊させて毎日採尿
し、科学捜査研究所に鑑定依頼した。渡邊は角田・永山に対し、「水商売」の女性と不倫関
係にあったことを理由に酒寄を早急に諭旨免職にするように、また事件を公にせずに処理す
る方法を宮田と相談するように指示した。

  16日、尿から覚せい剤が検出された。宮田は角田・永山に対し、覚せい剤が検出されな
くなってから事件を生活安全部に引き継ぐこと、引き継ぎが遅れた理由については監察官室
で対処することを承諾させた。永山らは、事件認知の日を遅らせること、酒寄が覚せい剤と
の認識を否認したことにすることなどを打ち合わせ、渡邊と原に報告した。

3 17日、原は角田に対し酒寄を同日付で諭旨免職とするよう指示し、酒寄は、退職願や上
申書を提出して諭旨免職となった。19日までは尿から覚せい剤が検出され、20日からは検出
されなくなったため、永山は事件を薬物対策課に引き継ぐよう連絡し、角田に連絡した。
角田は原、渡邊に報告した。同日午後。酒寄をホテルから薬対課に引き渡した。薬対課は事
情を知らぬまま採尿・家宅捜索を行ったが、証拠は発見されなかった。

4 永山は13日、証拠物を隠滅するため回収を外事課長等に指示し、14日に回収された。
永山の指示に従って、外事課長代理を通じ課長補佐が個人ロッカーに保管していたが、1998
年2月、焼却場で廃棄した。
           ◇
  私が具体的に担当したのは2、4、5分冊で、そのほとんどが被告人らの部下として本
件に関わった者の供述調書である。そしてそれらの多くの調書には、指示された内容が違法
であることを知りながら、自分の身分の保持のためやむを得ずそれに従った苦渋の選択ぶり
が赤裸々に描かれている。例を挙げると、次のようである。
 
「私は、どうして、宮田部長までも、こんな滅茶苦茶な渡邉本部長の違法な指示を受け入れ
てしまったのか納得できませんでした。しかし、我々警察官には、警察官としての良心があ
る一方、組織人として、上司の命令には、たとえ、それが違法な命令であったとしても、こ
れに従うという習性があるのも事実でした。警察官の人事を握っていたのは、警務部長であ
り、最終的には、本部長でした。その本部長による直々の指示に背けば、その後の人事にお
いて、いかなる不利益を被るかも知れませんでした。そこが、人事を握っている者の強みで
あり、人事を握られている者の弱みでした。警察組織の中の一員として、たとえ、それが違
法な指示であっても、その上司の指示に背くことは、かなりの勇気が必要でした。結局、私
は、その勇気が出せませんでした。私は、本部長自らの指示なのであり、その本部長の指示
に従っただけだと考えればいいじゃないかと、自分で自分を無理矢理納得させて、この違法
な指示を受け入れてしまいました。」

 また興味深かったのは、調書に添付されている資料である。その一部は「開示記録一覧」
にも標目が掲載されているが、大きく分けると、■事件を内部で処理するために作成された
報告書、■事件が外部に漏れないようにするために、A子やその実家、酒寄の実親に接触し
た報告書、■事件が発覚した場合を想定してマスコミ記者会見用に起案させた原稿、といっ
た類のものである。犯人隠避・証拠堙滅を図るため、県警がどの程度のことまで画策してい
たのかが見て取れる。
 
警察は、その擁する人員・予算・権力が強大であるからこそ、未曾有の大事件の捜査なども
遂行可能になるわけであるが、その強大なものが逆に証拠堙滅に使われた場合にはここまで
のことがやれるのか、と空恐ろしい感想を持った。

  このような貴重な資料を入手した団体の役員として、どのように会員や市民の皆さんの
ために有効利用していくべきかを考えると頭の痛いところではある。しかしながら、小泉純
一郎首相が「思い出の事件を裁く最高裁」と詠んだように、まとめ上がる前に事件が風化し
てしまうようなことのないよう、お互いに尻を叩きつつ作業を継続していきたい所存である。
                               (総会報告より)

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● 活動報告&活動方針          (山田 泰)
〔活動報告〕      

1 はじめに
    一連の神奈川県警「不祥事」を契機として、2回にわたるシンポジウムを経て、昨年
7月「警察見張番」が結成された。結成前の数次の相談会で「見張番」の活動方針につき
議論が重ねられたが、警察の情報を徹底して公開させることを通じ、公安委員会・県 警
・各警察署を監視していくことを活動の中心に置くこととし、この方針が設立総会で 確
認された(会則3条)。そして具体的には、@渡辺元県警本部長等刑事事件の閲覧請 求
、A公安委員会の議事録の公開請求、B経理文書の情報公開請求、C警察発行誌紙の 公
開請求を行っていくこととされた(「警察見張番だより」創刊号4P参照)。 
  そしてこの方針に基づき、不十分ながらも1年間活動を行ってきた。
    いってみれば「警察見張番」ができること、あるいは「警察見張番」だからこそでき
ることを目指してきたものとも言えよう。
  今年10月からはいよいよ公安委員会、県警も情報公開実施機関とする条例も施行に
入る。
    この1年を顧みながら、次の1年の活動を考えたい。

2 活動報告
(1)警察改革の動き              
  全国各地で警察の腐敗・犯罪行為が続発する中、警察刷新会議は昨年7月「警察刷新
に関する緊急提言」を発表し、警察庁はこれを受けて8月「警察改革要綱」を公にした。
その後、公安委員会の管理機能強化、文書による苦情申出・回答制度の創設、「警察署評
議会」の設置を骨子とする警察法改正が行われた。
 
 他方、警察庁や各県警察本部等が全国の警察に対して行った特別監察につき、昨年12
月に発表された総務庁の行政監察結果(「警察庁における不祥事案対策に関する行政監察
結果」)は、特別監察の実施対象の範囲と対象数が不十分であり、またその評価も不十分
であること等を指摘し「不祥事案の発生が後を断たない状況を踏まえ、不祥事案対策の徹
底のための総合的な監察を新たに実施すること」など「やり直し」を勧告する状況にある。

今年4月から情報公開法が施行されるに至ったが、警察庁の「国家公安委員会・警察庁に
おける情報公開審査基準」(なおこれは今年10月から施行予定の各都道府県条例による
公安委員会・県警等の情報公開においても横滑りさせることが予想される)においても公
開は限定的であって、警察の秘密体質がどこまで是正されるか予断を許  さない。
      設立目的に則り、情報公開制度を活用した市民的監視が引き続き求められるものと
いえる。

(2)主要な活動
  @設立総会で確認されたとおり、数ある神奈川県警「不祥事」の中でも、トップが率
先して組織的隠蔽を行った渡邊元本部長等犯人隠避・証拠隠滅事件こそ警察組織の問題点
を端的に示すものであるとの認識から、この刑事確定記録の閲覧請求と許可後の閲覧(正
確性に留意したメモを含む)に力を注いだ(特別報告参照)。
    メディアも注目するところであり、多くの時間を割いて概ね閲覧は終了したといえる
段階に至ったが、今後これをどのように分析し、県民・市民に返していくか、十分な検討
が求められる。
    また、警察法改正を巡り神奈川で行われた参議院地方行政・警察委員会の地方公聴会
には生田が傍聴した。
    そのほか個別被害事例の訴えにつき適宜助言等を行った。
  A問題点や状況の理解を深めるため、会員を対象として、定例会を3回(昨年9月、
今年2月、5月)開催した。
     第1回は、渡邊元本部長等事件の概要と記録閲覧問題の報告、県議会防災警察委員会
の議論状況、第2回は、「警察問題の一考察」と題する岩村智文弁護士の講演、第3回は
暴走族取り締まり及び時差式信号機の危険性の報告をテーマとして行われた。

(3)市民との接点のためホームページを開設し、適宜情報を提供した(ただ掲示版は今
年6月当面閉鎖とした)。
    また会報として「警察見張番だより」を4回(昨年9月、今年1月、4月、7月)発
行し、県議会・横浜市議会各会派、記者クラブ等に配布した。

(4)概ね毎月1回役員会を開催して、この討議に基づき運営を行った。


  〔活動方針〕

  1 渡邊元本部長等事件記録につき分析を進め、検討のうえその成果を発表する。
  2 公安委員会及び県警に対し必要な情報公開請求を行う。
    @ 渡邊元本部長等事件等の公安委員会議事録
    A 公安委員会議事録・添付資料の定点観測
    B その他
    なお、非公開の場合情報公開訴訟も展望する
  3 その他神奈川県警の市民的監視等のため必
要な活動を行う。
  4 例会開催や会報発行を続けるとともにシンポジウムなども行っていく。
 5 会員を普及する。
  
 〔人事〕
   
代 表  : 佐久間哲雄、北川善英
事務局 :  生田典子、工藤 昇、犀川博正、鈴木 健、藤田温久、山田健造、山田 泰、
      杉本三郎、矢島慎豊、萩野谷敏明   
会 計  :  本郷敏子
会計監査:    益子良一


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● 閉会のことば             (北川 善英)
 
横浜国大教授 北川 善英
《犯罪社会、暴力社会に向かう日本》 
  昨年、17歳の青少年による殺人事件が相次いだ。統計上、青少年犯罪の発生件数が、
戦後一貫して減少していることは事実であるが、ここ数年、増加傾向にあることもまた事実
である。青少年犯罪の凶悪化についても同様のことが言える。また、公立の小中高校の児童
生徒の暴力行為も、毎年、「過去最多」を更新しているが、各学校からの「回答件数」に含
まれない小さな暴力事件や窃盗事件は、その数十倍もあるだろう。注意すべきことは、犯罪
や暴力行為の増加傾向・凶悪化は、青少年の世界だけではなく、大人の世界についても言え
ることである。
 また、「外国人」による犯罪も急増している。7月末、「外国人」による荒っぽい強盗事
件が、銀座のど真ん中と長野県の辺鄙(へんぴ)な山村で同時に起きたことは、もはや、都
会も山村も安全ではないことを示している。私が勤務する横浜国大にはアジアからの留学生
が多いが、彼らによれば、特定の国の特定の地域からの、犯罪を目的とした密航者が急増し
ていることは事実であり、彼ら自身も、それらしき同胞には"近づかず、話さず"と警戒して
いるという。
  
《抑止力としての「共同性」》
 犯罪や暴力行為の増加傾向・凶悪化や「外国人」による犯罪の急増には、共通の背景があ
る。簡単に言えば、「共同性(コミュニティー)の崩壊」である。かつての、農村的あるい
は下町的な「共同性」は、高度経済成長後の都市社会化・消費社会化により急速に失われて
いる。また、外国人に排除的な社会のありかたは、かえって、犯罪の「国際化」への抵抗力
を失っている。
 問題は、私たちの社会が、かつての古いタイプの「共同性」に代わる新しい「共同性」を
創り出せていないことである。その基礎となる価値観とそれを具体化する規範意識(ルール)
についてのコンセンサスを確立できていないからである。オイルショック後の日本の企業社
会化、90年代以降の市場原理優先のなかで、そうした価値観や規範意識が崩されてきたとい
ってもよいだろう。
 そうした価値観や規範意識はどこに求められるのだろうか。特定の「日本」という民族・
伝統・宗教(神道)に求めようとするのが、『新しい歴史教科書』である。しかし、歴史的
にも現実的にも、日本社会には、多様な民族・伝統・宗教が存在してきた。そのような多様
性に共通するもののなかには、21世紀に引き継ぎ発展させるべきものも多い。そして、それ
らの大部分は、日本国憲法の普遍的な諸原理を具体化したものと一致する。
  
《警察と「警察見張番」》
 社会の安全を担う警察組織もまた、社会の新しい「共同性」の基礎となる価値観・規範意
識を共有する必要がある。そうした価値観・規範意識を共有しない(できない)警察組織は、
社会にとって何の意味もないだけでなく、反社会的存在でしかない。現在、多くの市民から
「犯罪と不祥事の温床」とみられている警察組織が、社会の安全を担いうる存在として立ち
直るためには、市民感覚からかけ離れた「共同性」(組織防衛優先、秘密主義など)を払拭
することが必要である。それは、市民と直接触れ合う現場の警察官の多くの実感でもあろう。
「警察見張番」の役割は、警察組織の情報を公開させ、その活動を監視することによって、
警察組織が、日本国憲法の普遍的な諸原理にもとづく価値観・規範意識を市民と共有できる
ようにすることであろう。


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