トップ画面に戻る
(2005.03.07.)

* 警察見張番だより 17号
***** もくじ *****

お読みになりたい項目をクリックしてください。

     ● 市民の良識と警察見張番          (佐久間哲雄)

     ● ついに訴訟になる!             (鈴木 健)

     ● 緒方氏宅電話盗聴事件訴訟        (畑野 君枝)

     ● 勉強会に参加して感じること        (いだ・むつつぎ)

     ● "警察は保傳"に思う             (石川 利夫)

     ● 刑事告発@体験記              (間瀬 辰男)

     ● つれづれコーナー   (不良 少年・遠藤真木・石田美智子)

     ● 編集後記

トップ画面に戻る

目次へ
● 市民の良識と警察見張番  (弁護士 佐久間哲雄)
2月12日・13日の2日に亘ってNHKは裁判員の参加する裁判の特集番組を放映した。
 1日目は、裁判員が加わっている刑事裁判のドラマ。2日目は、横浜桐蔭大学のロース
クールで行った裁判劇に裁判員として参加した市民と、最高裁事務総長、検事総長および
日弁連会長の法律実務家のトップによる討論、意見交換となっていた。
ドラマは、よくねられており俳優さんたちも熱演した。2日目の市民とプロの討論も双方
真摯で気持ちがよかった。検察官、弁護士サイドは、いずれも文字通りトップが出演した
のだから、裁判官サイドも最高裁長官が出れば更に重みがでたろうが、最高裁裁判官は、
検察官・弁護士・学者および行政官等が出身母体となっており、キャリア裁判官サイドの
トップ代表の意味で最高裁事務総長の出演となったのだろう。事情はわからないわけでは
ないが、市民に開かれた裁判所へとの大改革の中にあるのだから、最高裁長官が国民に直
接語りかける英断を期待したい。

前置きが長くなった。以下、私の率直な感想。
一人一人の市民は、信頼するにたりる、みんな良識を持っているとの私の思いを改めて確
認した。出演した市民は、揃って責任の重さを口にした。経験したのは模擬裁判の裁判員
であったのに、自分はあの判断でよかったのか出演した後数日の間考え続けたと言った。
                   
これに対し最高裁事務総長は、法律判断を皆さんに問うのではない、Aという事実からB
という事実が認定できるか、或いはCという事実が認定できるのではないかということを
裁判員の皆さんに考えて貰う、市民の立場で考えて貰う、このような判断は、職業裁判官
も一般市民も同レベルの問題なのだと一生懸命説明した。国民に身近な裁判所、開かれた
裁判所を実現したいと付け加えた。
また、検事総長は、検察官が法廷で主張を展開するとき、図式を使いビジュアル化したり
して判りやすい説明ができるよう研究を進めている。裁判員の方々に充分理解して貰える
ようにしたいと力説した。検察も国民に対し説明責任を課す決意であると述べた。

コメンテーター役の大学教授が、今進みだした司法改革が日本に本当の意味での市民社会
をもたらす一つの入口になるのではないかと締めくくった。出演した法律家トップの3名
は、それぞれの組織の代表として司法改革を何としても成功させたい、市民が中核となっ
て構成する市民社会の到来は否定し難い歴史の流れであるとする認識を示した。
         
「世界」3月号に裏金問題を告発した北海道警察釧路方面本部元部長原田宏二氏のインタ
ビュー記事が載ったが、「大小の過ちは常に付きまといます。問題は、(警察が)それを
率直に詫びることのできない組織であることにあります。そこにこそ信頼の原点があるの
です。」と述べたくだりがある。

上の法律家3名の方々、原田宏二氏いずれも市民の良識を信頼しての発言である。
私たちの警察見張番は、神奈川県警の現状に怒り結成された。警察は、最も地域・市民に
密着した行政組織の一つである。捜査の機密を盾にとって、いつまでも閉じた組織であり
続けることは歴史の流れに逆行するものというほかない。
私たちは、自信を以って市民の良識を武器に斗いたい。


目次へ :
     
● ついに訴訟になる!  (弁護士 鈴木 健)
1 事務局長である私の怠慢でなかなか実現できずにいた情報公開請求訴訟が、ついに2月
28日、念願の提訴に至った。代理人弁護士は、我らが警察見張番代表佐久間哲雄弁護士、
新進気鋭の若手阪田勝彦弁護士と私の3名。神奈川県情報公開条例第3条2項にいう「実施
機関」が神奈川県警本部長であるため、被告は神奈川県警本部長。事件名は「文書非開示処
分取消請求事件」で、取消の対象となるのは、「見張番だより」第16号にも添付した「平
成12年度・15年度警察本部交通指導課の捜査報償費(県費)支出に関する一切の資料
(現金出納簿および支払証拠書類)」と、同内容の「平成12年度・15年度警察本部少年
課の捜査報償費(県費)支出に関する一切の資料(現金出納簿および支払証拠書類)」につ
いて公文書開示請求をなしたのに対し、「@現金出納簿(現金出納帳)の月日欄、摘要欄、
金額欄、差引残高欄、A支出証拠書類のうち、捜査費総括表の金額欄、捜査費支出伺、支払
精算書、支払報告書(平成12年度分のみ)、捜査費交付書兼支払精算書、支出伝票、領収
書」を非開示とした処分である。「捜査報償費」とは、犯罪の捜査に関し、協力をしてもら
った一般市民に対し支出される謝礼のことである。
この「捜査報償費」は、現実には幹部の飲食費等に流れており、謝礼を支払った証拠として
の領収書等は、実際には協力者に支払われていないのに、支払われたかのように偽造された
虚偽のものであるという指摘がなされていた。

 実は、この訴状を作成している間に、全国の都道府県オンブズマン組織で「報償費非開示
処分取消請求事件統一訴状案」が作成され完成していることが判明した。その訴状案を送っ
ていただき、神奈川版にデフォルメして作成した結果、当初予想していたよりもはるかに大
部な、充実した内容の訴状が出来上がった。証拠も、既に他の地方裁判所で元警察官が証言
した証言調書、不開示処分取消を認めた判決、全国の都道府県警察の不祥事に関する新聞・
雑誌の記事、警察内部の暴露本など、バラエティに富んだものが入手できた。

2 訴状の構成であるが、まず、県警本部長が一部非開示とした理由に、個人情報かつ公安
情報として情報公開条例5条の除外事由に該当すると主張していることを挙げ、それに対し、
不正支出隠蔽を目的とする非開示処分は違法である旨述べている。
 そして、警察の不正経理の常態化はつとに指摘されてきたことであることを、上記新聞記
事や元警察官の証言などを指摘しながら述べ、「このように犯罪捜査報償費が、真実は捜査
協力者に対する支出の実態がなく、架空かつ不正な支出であることが明らかである。ある自
治体の警察にあることは他の自治体の警察にも確実にあるのであり、神奈川県警もその例外
ではない」と述べている。
 さらに、一部公開された資料を基に、本来捜査報償費が本当に捜査協力者に支払われてい
るのであれば、事件の多かった月には多い支出額に、少ない月には少ない支出額になるはず
であるのに、帳簿上は各月とも収入と支出額がほぼ同じであることを指摘。そして、神奈川
県情報公開条例の解釈論を述べて、訴状を結んでいる。

3 本件はいわゆる行政訴訟であるので、審理を行うのは、現在の横浜地裁で行政訴訟を集
中的に扱う第1民事部である。通常、訴訟が提起されてから第1回の弁論期日まで2か月前
後、その後は、1〜1か月半に1回程度のペースで期日が入っていく。
 訴訟の進捗状況については、適宜「見張番だより」や例会時に報告させていただきますの
で、乞うご期待。
        ・・・・・・  
 鈴木弁護士の文中にある「新進気鋭の若手阪田勝彦弁護士」のプロフィールをご紹介しま
す。
            
2000年4月弁護士登録で、もうすぐ丸5年のキャリアになる。「5年のキャリア」とい
うと、弁護士としてはさほど長くはない。しかし、手がけた事件は誰よりも多く、
有罪率99%といわれる現在の刑事裁判において、既に無罪判決を4件取得している。
 行政訴訟についても、大さん橋事件を主任で遂行中の、まさに新進気鋭の若手弁護士。
そのこなした事件数及び成果から見れば、既に「若手」の域を超えている。今回の情報公開
請求訴訟においても、大いなる活躍が期待できる。所属横浜合同法律事務所。
  
ハンサムでテキパキとした好青年の弁護士です。元気をいただいています。(編集子)



目次へ :
     
● 緒方氏宅電話盗聴事件訴訟  (前参議院議員 畑野 君枝)
実行犯は、神奈川県警公安一課の現職警察5人。
1986年11月27日に発覚した緒方靖夫氏(現参議院議員)宅・盗聴事件では、神奈川
県警が東京都町田市にまで出向き、憲法21条[通信の秘密はこれを侵してはならない]に
違反する犯罪を犯したことに対して、県民の怒りは沸騰し、新聞・テレビは事件をトップで
とりあげました。

 盗聴実行警察官への給与支給や盗聴アジトの家賃・光熱費の支出は、明らかに違法な公金
支出です。これらの公金返還と今後の支出中止を求め、1987年11月11日、住民監査
請求をおこないました。県監査委員はこれを棄却。そして1988年2月5日、私たち13
名は、真相を明らかにし盗聴費用約1300万円を県に返すよう、横浜地裁に住民訴訟をお
こしたのです。

 公判では、唯一出廷した盗聴実行警察官が「記憶にない」を繰り返し、別の盗聴実行警察
官の息子は、アジトの名義人となっていましたが、裁判長の前で宣誓すら拒否するなど、被
告側の不誠実な対応が続きました。

 一方、盗聴被害者の緒方靖夫さんは、NTT職員がアジト前の電柱にのぼり端子函を開け、
「顔色を変えた」という盗聴発覚の様子や、事件発覚後に「犯罪があるとは認めない。警察
は静観する」と逃げるように帰った町田警察署員のこと、また警察の盗聴を確認しながらも
起訴しなかった東京地検についてなどを、法廷でリアルに語りました。さらに、この盗聴事
件が国連人権委員会で正式に受理されたと述べました(1991・4・17)。

 また、元警視監・松橋忠光さんは、原告側証人として出廷し、警察の会計は二重帳簿にな
っていることを明らかにしました(1993・9・27)。今警察の裏ガネ作りを初めとし
た不正にたいし、勇気ある警察内部からの告発がおこなわれていますが、もし松橋さんがお
元気でいらっしゃれば、と思わずにはいられません。

 1996年3月18日、地裁判決は、盗聴への関与について、実行警察官3人に加え、
上司である県警公安一課長(当時)らに対しても「指揮命令したか、これを承認していた」
と認定し、警察庁警備局の関与も指摘。県警の組織的犯行が断罪されたのでした。しかし、
盗聴費用については、県警か警察庁警備局かどちらかの支出かわからないとの理由で、公金
返還請求は棄却されました。

 1996年3月29日、原告は東京高裁に控訴。1999年2月25日、判決は「棄却」。
しかし、盗聴は公安一課長が「組織的にこれを指揮命令していたものと推認する」とした上
で、県警備部長、警察本部長の責任を明らかにしたことは、緒方国賠訴訟の高裁判決
(1997・6・26勝訴)を上回る内容であり、真実にさらに近づいたものでした。


 盗聴被害者の緒方周子さんは、「神奈川県訴訟から私が学んだ最大の教訓は、『権力の
不正は、住民が常に監視し、あらゆる手段を尽くして正していかなくてはならない』とい
うことでした。」と述べていらっしゃいます。11年におよぶ住民訴訟は、今もそのこと
を私たちに教えています。
 

目次へ :
     
● 勉強会に参加して感じること  (詩人 いだ・むつつぎ)
 
 04年12月8日、横浜駅西口、神奈川県民サポートセンターで、定例の勉強会が行わ
れた。講師は中野直樹弁護士(まちだ・さがみ総合法律事務所)。中野氏は、さがみはら
市民オンブズマンの代表幹事もしている。

 警察の不正経理を糺す戦いに関して、中野弁護士の体験もふまえた貴重な報告がなされ
た。
北海道から九州、警察の不正経理は目をおおうばかり。法の番人である警察が、日本列島
で犯罪の競争のようだ。庶民のまともな声が、なぜ警察に通じないのか考えてしまう。
いま殺人、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)、大企業の犯罪、麻薬等の犯罪が新聞・テレビ
をにぎわしている。こうした犯罪と警察の犯罪も、共通の腐敗要素があるから全国的に犯
罪が広まってしまった。

 私たちの怒りをおさえてくれた人が元警官にいた。元警視監の松橋忠光さんである。
当時は警視監の数も少なく、殿様のような扱いを受けていた。
秋田に赴任した際、駅に大勢の出迎えがあり、奥さんを同伴していた人もいるほどだった
という。
中野弁護士は、緒方宅電話盗聴事件が発覚した際、ただちに現場へ行った時のことを話さ
れた。この事件にぶつかった迫力ある報告、また盗聴警官を追って広島へ調査に入ったこ
とは大変だったと思う。最初に述べた松橋さんは、法廷で証人として立ち、警察の不正・
犯罪に関することを具体的に証言した。中野弁護士は、いかに松橋さんの証言が、この警
察の盗聴犯罪を裁く力になったか、を話された。元警視監の松橋さんが、住民の立場で、
この裁判をバックアップしたのである。
 

 松橋さんに少しふれてみたい。18年前、上記裁判の原告であった私は松橋さんに警察
を裁く力をお借りしたいと手紙を出した。松橋さんから断られても断られても、私はお願
いの手紙を出した。最後に松橋さんは受けてくださった。
          
 赤坂警察署・架空領収書事件は不思議な事件である(ウソの領収書で次々と金を手に入
れていた警察署ぐるみの事件。現在の裏金事件と同じ根っこがある。)そのニセ領収書で
手に入れた金を返せという裁判で、警察は事実を否認しないで、請求を認諾したのだ。
法律用語で一見して分かりずらいが、犯罪の本質を分からないように白旗をかかげ、これ
で終わりとは驚きだった。順法であるべき警察が、法を逆手にとったやり方は、私の体の
中を怒りと情けなさが吹きぬける。
 北海道警察の不正経理、元警視長、元署次長の公金ねこばばについて実名証言。松橋さ
んに続いて歴史の歯車を動かした人たち。この方々の勇気に対して、松橋さんの奥さんか
ら、「主人もあの世で喜んでいるはず」というお手紙を私はいただいた。
 警察はいま不正経理だけでなく、労働組合、市民に対し憲法違反行為の数々。これは全
て重要な犯罪である。現職警察官内部から自浄能力が必要。警察官労働組合なくして警察
の正常化はムリだろうと松橋さんは述べていた。
中野弁護士の話を聞きながら、私もそう思った。先進国では日本だけが警察官労働組合が
ない。たとえ困難でも、私たちは目標を掲げる以外にないと思う。

〜〜〜〜 次ページへ 〜〜〜〜
目次へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送