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警察見張番だより 22号の1
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横浜国立大学教授 北川善英 安倍官房長官は、自民党総裁選に向けた政権公約で、「憲法改正」と「教育改革」を柱に掲げた。戦後日本 の原点(憲法と教育)を否定する政権公約が初めて登場したという点できわめて重大である。戦後日本の原点は、 すでに過去のものなのだろうか? 教育――フィンランドは、最新の二度の国際学力調査(PISA)で「学力世界一」となった。経済競争力でも世界 一と評価され、IT産業の先端国家でもある。PISAを実施した経済協力開発機構(OECD)教育局指標分析課長 は、フィンランドが教育を平等に保障しつつ、教師の個別指導と子どもの自主的学習を可能とした理由を2つ挙 げている。@教員の自由裁量と学校の自治権を拡大することによって教育の質を高めたこと、A行政の支援と 親・社会の協力によって、教員が教育に専念し専門的な力を発揮できるようにしたこと(具体策の一つが平均16 人という学級規模)、である。 戦後日本の教育基本法(1947年公布)と『学習指導要領・一般編(試案)』(1950年前後)が目指した方向は、フ ィンランドの教育改革の基本線にきわめて近い。しかし、自民党・民主党は教育基本法改正案を国会に上程し ている。今、日本に必要な教育改革は、原点=教育基本法に立ち返ることではないだろうか。 憲法――日本国憲法の最も奥にある基本理念は「個人の尊重」(13条)である。それを支える基本原則が平和 主義であり、基本的人権の尊重であり、国民主権・民主主義・地方自治である。「個人の尊重」は、様々な基本 的人権として具体化されるが、その中で最も重要なのが思想の自由や宗教の自由といった精神的自由(ココロ の自由)である。 靖国参拝の根本問題は、軍人にとどまらない戦争による死者(軍人の死者の3分の1から3分2は餓死だと言わ れている)、日本だけでなく諸外国の戦争による死者の、さまざまな思いや願いを無視している点にある。一宗 教法人にすぎない靖国神社に、国家は積極的に関与してきた(国家基準に基づき、厚生省が「祭神名票」を送 付して合祀)。靖国参拝問題は何よりも一人一人の人間の精神的自由の問題であり、戦争による死者をどう考え るかという究極の「個人の尊重」の問題であって、外交問題は2次的問題でしかない。 自民党・民主党の教育基本法改正案に共通する問題も、教育において、「個人」ではなく民族・伝統・国家と いったものを重視する点にあり、それらを尊重し愛することを個人のココロを無視して強制するという点にある。 安倍官房長官の言う「美しい国」も「新しい国造り」も、その基礎に、戦後日本の原点(憲法と教育)を置かない 限り、個人とそのココロにとって、危険なものになりかねない。 |
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仙波さんを支える会 東 玲治 神奈川・警察見張番の皆様、お元気ですか。 仙波君と僕は7月28日、見張番総会にお招きをいただき、お話をさせていただきました。そのとき、僕は警察の 裏ガネ問題は民主主義の問題、民主主義の危機だと申し上げました。また、裏ガネはどこにでもあるということ も申し上げました。 その後間もなく、岐阜県庁の裏ガネ問題が暴かれました。内部調査の結果を外部の検討委員会が検証中で 全容こそ明らかではありませんが、一時期、裏ガネ・プール金の総額は4億6000万円に達し、監査・検査の手 が及ばない県職員組合や個人名義講座に分散・移管するなどの隠蔽工作が行なわれていたこと、騒ぎが起き るとその一部500万円を焼却した、不正を監視する監査事務局もカラ出張で100万円の裏ガネを作っていたな ど、俄かには信じられないような話が伝えられています。 しかし、事実なのです。飲み食い、接待、職員に貸し出されてもいたそうです。 その時期に知事であった梶原拓は、当初裏ガネの存在を知らなかったと弁明していましたが、後に、知って はいたが、隠蔽は指示していないと発言を翻しました。知事を相手に起こされた住民訴訟の費用にも当てられ ていたのですから、知らないわけがありません。隠蔽を黙認したに過ぎません。 梶原は、旧・建設省出身のキャリア官僚でした。全国知事会長も務め、知事会長として地方への財源・権限 委譲をめぐって国と渡り合い、「闘う知事会の顔」と呼ばれ、それなりの見識を持ち、また評価された人物でも ありました。その梶原にしてこの有様でした。おそらく、梶原は建設省時代から裏金にどっぷり浸かってきたの でしょう。 いくら有能でも、公金に対するこのようなルーズな感覚の持ち主に行政を任せてはならないと、僕は思います。 この事件は、行政もそのトップも裏金に首まで浸かっているという実態を白日の下にさらしたといえましょう。 まさに、裏ガネはどこにでもあるというわけです。 少し古いデータになりますが、全国市民オンブズが、最初に都道府県の裏ガネが表面化した平成9年に実 施した全国調査(沖縄県を除く)によると、28都道府県が自主調査を行なった結果、436億円の不正支出が判 明、内303億円が返還され、職員2万人余りが処分を受けました。3県は不正はなかったと回答し、18府県は調 査の必要さえ認めませんでした。神奈川も調査をしていません。 これは自主調査の結果に過ぎません。調査の範囲もまちまちですし、取り組みの意欲も同じではないでしょ う。それでも、この実態は我々を驚かせるものでした。調査しなかった県には不正がないなどと誰が思うでしょ うか。本当の調査が行なわれたなら、どんな結果が出てくるか、もう想像もつきません。 こんなデータもあります。都道府県議会議員の政務調査費に関するもので、ご承知の通り、この政調費は議 員の闇手当てといわれてきたものですが、情報公開が進む中で、都道府県議会はシブシブ、政調費の使途・ 収支を議長に報告し、公開するようになりました。しかし、領収書の添付を義務付けているのはわずか10道府 県しかありません。神奈川県議会の場合、会派当てに議員一人分として、それとは別に議員個人にそれぞれ 53万円が毎月支給されていますが、領収書の添付は義務付けられていません。議会でそう決めているのです。 議員としての調査・研究に当てる費用として支給されるものですが、実態は飲み食い、慶弔費などといわれ、 収支報告は偽造という疑念を払拭できません。知事も職員も、監査に当たる職員も、おまけに行政をチェック する議員までもが、裏ガネに汚染され、書類を偽造して公金を食い物にしていることを事実とデータが示して います。 民主主義はそれなりによく出来たシステムです。しかし、どんなシステムもそれにかかわる者たちがデタラメを すれば、たちまち形ばかりのものになってしまいます。 都道府県と都道府県警察の会計処理の手法は同じです。都道府県にあって、都道府県警察に不正がないな どということはあり得ません。 仙波君の果敢な告発が生かされない原因が、おのずと見えてくるはずです。彼らは不正を共有し、互いをか ばいあい、県民を平然と欺いているのです。 追記: 岐阜県庁の裏ガネ問題はその後、第3者機関(弁護士3人構成)が確認調査の結果、平成4年度から12年間 に作られた裏ガネは内部調査をはるかに上回る約17億円に達し、監査事務局のそれも当初よりさらに多い 300万円を超えていたことが分かった。(9月2日記) |
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「警察見張番」会員 間瀬 辰男 ★警察の組織構造の異常 警察の組織構造は意外に知られていない異常な部分がある。警察は政治学的に言うと「国家の暴力装置」 ということになる。したがって、官の世界は上命下服の階級社会であるが、その究極の組織である。つまり、 同じ組織でありながら、ある階級まで行くと警察官の身分が変わるのである。 警察官の階級は、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査である(警察 法62条)。このうち、警視正以上の階級は一般職の国家公務員であり、それ以下の階級は地方公務員であ る(同56条)。だから、組織の中に最初から一般職の国家公務員である者、中途から国家公務員に変わる者、 生涯地方公務員である者が混在するのであるのである。混在するといっても階級社会であるから、階層別に 明確な線引きがある。中央と地方といういわれなき構造であり、上層部は江戸時代の代官のようなもので、こ の組織風土が公金を不正に裏金化して上納するということに少なからず要因になったかもしれない。 ★直接聞いてみて初めて実感できる 世の中には聞いても実感できない話は多々ある。捜査報償費の問題は最近の問題のように受け止めてい たが、何と30年以上前にそれに対し異議を唱えた警察官がいたのである。しかも、30年以上に亘り閑職とい う目に見えない檻に囲まれ、いじめにも耐えてきたのである。こういう人は他にもいたのだろうか。仙波さんが 世間に出ることによって、名乗り上げる人もいてよさそうなものであるが、今のところ他にはいなかったというこ となのだろうか。 組織ぐるみで不正が行なわれている時、(それ)不正に参加しない者に対する組織側の報復への恐怖感が そうさせたのであろうが、組織の中で誰一人として呼応しないだけでなく、やさしい対応もなかったということは、 警察組織がナチスも顔負けの史上最高の全体主義に染まっているとしか言いようがない。全体主義の締め付 けは人々の口をふさぎ、行動を縛る。そして、他人に対し非情になっていくのである。 本人は勿論だが、家族の心労も人の忍耐の域を越えたのではないだろうかと思うと心が痛む。こういう真っ 直ぐな心を持った人に本来の警察の仕事をさせなかったことによる損失について追及されるべきと考えたく なる。 ★捜査報償費は廃止すべきである 仙波さんの話(於7・28見張番総会)を聞いての私の結論は、捜査報償費を廃止すればこの問題もなくなる ということである。多分、事件勃発時から5年経過を見計らって廃止するだろう。 そもそも、我が国の風土として情報が金になるという風土はない。まして、偶然遭遇した見聞を警察に話す ことは国民の協力ないし善意であると考えているはずであるからである。金を払って情報を集めようとすると、 金を受け取る側は情報の価値を高めようとする。そうすると、そこに不純なものが入りかねない。極端な場合 は「おとり捜査」になりかねない。「おとり捜査」は違法捜査である。私は、物心ついてから55年以上になるが、 警察に報償費があるなどというのは思いもよらないことだった。大部分の普通の庶民は私と同じではないだろ うか。 私は、自身で刑事告発し書類送検にまで持ち込んだことがある。その時、告発に対し報償費の話は警察か らはなかった。告訴、告発に対して報償費が支払われる仕組みがあるとするなら、私の告発にたいしても話が あってしかるべきだ。ないのは釈然としない。これも、情報提供だと思うからである。もっとも、面倒くさいことを 持ち込んだ奴に金など払えるかという一面もないわけではないが……。 ★点が線になり面になる 捜査報償費についての内部告発は、最初の一人の仙波さんという「点」が、二人になった時「線」になった。 三人になった時「面」になり、上からの改革ともいえる原田さんが加わったことで3次元(立方体)の厚みのある 世界になった。この運動を今後も続ければ時間軸が加わり4次元の世界になる。松本清張ではないが、点が 線になった時、警察は正直にならなければいけなかった。 捜査報償費の虚偽領収書を書かされることがいかに警察官の心を蝕んでいるか。警察不祥事の原点はこ こにある。原点の腐ったところが、組織全部を腐らせるという仙波さんの考えに賛同する。 これからも、人々に知ってもらう活動を続けていかれることを見守りたいと思う。 |
「明るい警察を実現する全国ネットワーク」 |
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会員 杉山 寅次郎 「警察の裏ガネ」を知ったのはいつ頃のことだっただろうか。思い起こせば10年前の1996年ごろ、警察ジャ ーナリスト寺澤有さんや交通ジャーナリスト今井亮一さんらが「赤坂署の参考人費用カラ支給」をあばき出し、 裁判でも勝利する、ということがあった。同じ時期、「ロフト・プラスワン」が新宿厚生年金会館近くにあった頃、 寺澤有さんによる「警察の裏ガネ問題」のイベントがあった。参加者は10人程度、閑散としていた記憶があ る。最近、警察問題の集会はほとんど満員になることを考えると、時代は変わったと言えるだろう。 また、いつのころか、愛知県警「正義の警察官グループ」による告発があった。朝日新聞の落合博美さんの 記事だけが光っていたことも思い出す。 そんな時代、なんと言っても決定的だったのは、松橋忠光さんとの出会いである。1994年東京地裁、遠藤 国賠の廊下で声をかけられたのがきっかけだった。「あなたが言ってた共産党の盗聴事件は、今横浜で住 民訴訟が進行しています。今度見に来ませんか…」と。翌日、図書館で調べてみて驚いた。その著書『わが 罪は常にわが前にあり』、衝撃的だった。元警視監(警察庁ナンバー2)が「警察の裏ガネ」を告発していた のだ。 それ以降、松橋さんのお誘いに従って盗聴事件の住民訴訟を何度か傍聴した。その関連で、参議院決 算委員会、緒方議員の答弁を見聞する機会があった。政府側は、国家公安委員長兼務の白川勝彦自治 大臣、「ご質問の盗聴事件については詳細を把握しておりませんので今後勉強させていただきます……」 と。その後、はたして勉強したのだろうか。 1994年9月、東京地裁国賠判決は、神奈川県警のみならず盗聴実行者である警察官個人の責任を認め ていた。画期的な判決である。盗聴事件当時の伊藤榮樹検事総長ですら、警察には勝てぬと判断して、 一方的に免責してしまっていたのだから。「巨悪を剔抉(てっけつ)し、悪い奴を眠らせず被害者と共に泣く 検察」と実にカッコイイことを言っていた検事総長にしてからがこの体たらく。その後のあれこれを考えると情 けなく、そして罪深い…。 2001年1月、「遠藤国賠ニュース」の発送作業中のボクたちは興奮していた。というのも、遠藤国賠の代理 人・阿部泰雄弁護士が、「仙台・北陵クリニック事件」(巷間「仙台筋弛緩剤事件」と誤って呼称されている事 件)の弁護団長に就任したというニュースを耳にしていたからだ。「冤罪だってぇ〜?阿部さんも、今回ばか りは勇み足だろう!」「いや『週刊朝日』が書いてるよ。冤罪かもしれないって」と仲間たち。「あの阿部さんが 受任したんだから、よっぽど確実な根拠をつかんでるんじゃないのかなぁ〜」とボク。ここで問題なのは、「有 罪推定の原則」に立って皆がものを言っていたということだろう。マッ、その年正月早々、真っ黒けのけの犯 人視報道が展開されていたのだから、それも無理のないことではある。マインドコントロールにかかっていて も不思議はない。阿部弁護士ですら次のように語っているのだ。「報道を見て当然M君がやったのだろうと 思って接見に行った。『どうやって筋弛緩剤を入れたのか説明してくれないか』とM君に聞いたほどだ……。 ところが……!」と。 2003年5月、「人権と報道・連絡会」で「恵庭事件」を知る。「恵庭事件」とはまた古い事件だなぁ…。ボクは、 「恵庭OL殺人事件」と巷間呼ばれる冤罪事件の勃発を迂闊にも知らなかったのだ。「恵庭冤罪事件」は、 聞けば聞くほど奇々怪々なものだった。12月、「恵庭冤罪事件支援会・東京」が結成された。ボクも参加し た。 2005年5月、恵庭控訴審の結審を目前に、札幌界隈で街宣活動&集会を行った。ボクは、北海道警察本 部周辺で街宣デビューを果たした。 「北海道警察本部の警察官の皆さ〜ん、毎日裏ガネ作りご苦労様でぇ〜す♪しかしボクは、職員の皆さん全 員が悪いとは思っていません!悪いのは警察庁からやってくるキャリアです!もっとも、裏ガネを作らせられ る皆さんの鬱憤ばらしのためとはいえ、その結果、無実のOさんがとばっちりを受けるのは絶対に許せません! 無実のOさんには無罪判決を求めます」。 かくして今日、「警察庁の裏ガネと冤罪とは、赤い糸で繋がれた、切っても切れない関係にあるものなのだ」と いうのがボクの結論である。そして、この二大害悪をなんとかして撲滅したい、というのがボクの願いであり、 課題でもある。 先日の仙波さんや大河原さん(元群馬県警警部補)のお話から、裏ガネや非情なノルマが、警察組織や現 場捜査官の意識をいかに腐食しているかが、裏付けられたのではないかと思う。こういう状況の下だからこそ、 |
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