警察見張番だより22号の2
(2006.09.15.)

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***** もくじ *****

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● 現場の警察官よ、人として勇気をもて!・・・・・・・・・・・・・・・・・・真田左近

● 北海道警察裏金告発から2年半、最近思うこと・・・・・・・・・・・・・・・斉藤邦雄


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● 現場警察官よ人として勇気をもて!

                   元静岡県警公安警察官: 真田 左近
★酷使と搾取の世界
 平成9年4月、私は静岡県藤枝市の郊外にある警察学校の門をくぐりました。卒配後は交番勤務を経
て署の公安警察官となり、平成15年3月までその職にあった者です。短い期間ではありましたが、先輩
諸氏の御指導、御鞭撻には今も感謝する身でもあります。けれども、かつての職場を思う時、私は複雑
な心境になります……。「一部の良からぬ者のために多くの人たちが酷使され、搾取され、虐げられる。
悪代官が組織を食い物にし、既得権に汲々とする。願望を優先するあまり社会の実態を見ず、つまらぬ
プロパガンダを流しては世間と乖離し、最後は自分たちの首を絞めていく……。」自らの目で見た警察
の世界とは、およそこのようなものだったからです。

★裏金による被害
 ここで警察組織の体質を示す一例を挙げますと、まず警察裏金問題があります。裏金問題は北海道
警を皮切りに全国へと飛び火し、組織の病理の深さを露わにしましたが、それに多少なりとも関わったと
いう点では、私も例外ではありません。藤枝署警備課に勤務していた頃の私は、「支払伝票」と称する国
費会計書類を少なくとも週2、3通、月に10通は作成していたからです。当時の上司警部による命令が
あってのことですが、それでも不正の一翼を担ったことに変わりありません。

 また、旅費の運営についても不正は行われておりました。旅費が振り込まれる私の個人通帳は取り上
げられ、入金のほとんどをピンハネされたことは紛れもない事実です。平成12年夏の九州沖縄サミット
警備の際には、県中部地方の所属間でひとり当たり10万円近い交付額の違いがでるなど、不可解な
現象は幾つか起きておりました。

 その一方で、現場警察官には経費が渡らない実態があります。公安警察官として業務をこなすなかで、
私は月3万から5万円の出費を強いられたのですが、組織はそんなことに見向きもしませんでした。内勤
警察官は仕事のために携帯通話料が月額1万円(自己負担)を超えることもありますが、どういうわけか
所属長クラスには携帯電話が無償貸与されてもいました。これとて上層部の利権のごく一部にすぎない
ことは、今さら言うまでもないでしょう。

★装備資器材を巡る矛盾
 装備資器材に関しても、深い矛盾があります。例えば、捜査車両は絶対数が不足しており、現場警察
官が私有車を使うケースはよくある現象です。現にこの私自身、外回りの公安業務の半分程度を私有
車にて行ったばかりか、地域警察官の頃には万引少年をミニパトに乗せるわけにもいかず、交番への
道すがらマイカーを使用したものです。
全国警察で問題になったウィニー情報漏洩事案とて、根は同じでしょう。所属長や幹部から配分される
公用パソコンは、使用頻度の高い現場には行き届かない。したがって、勤務員は自前で購入せねばな
りません。

にもかかわらず、警察上層部は、「公務での私物パソコンの使用を禁止する」といった通達を神々しく発
し、官僚的な手法をもって保身に励みます。誠におぞましい限りです。

★人権蹂躙団体、警察
 なお、問題は金や物にまつわるものばかりではないのです。現場警察官にとっての最大の凶事、それ
は過酷な勤務環境にこそあります。

 現に公安警察時代の私は、ひどい月で450時間の労働に従事しました。当直明けで夜の9時、10時
まで働き、気づけば40時間連続勤務となっていたこともざらです。24日連続、21日連続勤務にも就き、
10連投なぞ日常茶飯事。公安警察官となって1年余は、年次休暇を1日も取得できませんでした。

 さらに、私は平成13年秋に左足を公務負傷したのですが、あの時ばかりは‘警察の本質、ここに見た
り’という心境になりました。全治3か月の重症だったにもかかわらず、職場は休暇を与えるなどの温情を
示すことなく、警備出動を行わせるといった虐待まで行なったからです。要するに、勤務員が病気にな
ろうが怪我をしようが、はたまた命を落とそうが関係ないのでしょう。

 ただし、過重労働は私ひとりに限った話ではありません。刑事、生安などの内勤警察官のなかには、
いっそう過酷な勤務に就くケースも珍しくないからです。現に私が所属した藤枝警察署には過労で倒れ
る警察官が続出し、重度の内臓疾患を抱える人たちは署員120〜130人のうち十指を数えました。精
神に異常をきたす勤務員もおり、自ら命を絶った方もいます。この部分ひとつ見ても、警察組織が労務
管理というものをいかに疎かにしているかが分かるというものです。有態に言えば、警察は人権蹂躙団
体です。

★人としての勇気
 以上のような日常を送るなか、私は自ら警察を去りました。上司との確執が直接の引き金になりました
が、そこに至るまでには旧態依然で因習に満ちた組織に嫌気が差したことが大きく、加えて自浄能力な
ど期待できない日本警察を外から変えたいとの願いもありました。そんな思いが高じるうちに、無謀にも
組織を飛び出したわけです。

その後は「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の会員とさせていただくなど、皆様の御厚恩には感
謝の言葉もありません。不束者ではありますが、今後も御指導いただければ幸いです。

 ところで、警察のことをあれこれと考える私にとって、最近気になることがあります。それは、警察官が
権力というものに従順すぎるところです。御上の言うことに盲従するのは日本人の歴史的短所と思えま
すが、彼らはその傾向がひときわ強い。自分たちの人権が抑圧され、牛馬のごとき扱いを受けていると
いうのに、抵抗する人はごくわずかです。こんなことでは、警察全体主義の悪習を払拭することなぞで
きません。

 最後に、私は額に汗する全国の現場警察官にこう伝えたい。警察官よ、理不尽な官僚機構に屈服す
るな。小役人になるなかれ。上司の顔色を窺う前に、社会全体のことを考えよ。そして何より、人として
の勇気を持て!と。



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● 北海道警察裏金告発から2年半 最近思うこと

                        北海道警察OB 齋藤邦雄 

1 なぜ原田宏二氏を、バックアップしたのか    

 一口で申し上げれば「北海道警察という組織を裏切っても、原田氏を裏切れなかった。自分の資料を
出さずに口をつぐみ原田氏が立ち上がったことに背を向ければ自分は一生後悔する」と思ったからです。
私は、平成13年3月に北海道警察を勧奨退職しました。53歳の時ですが、馬鹿な裏金関係書類の作成
に精を出して、残る7年間、警察組織に飼い殺しの状態で自分を偽り生きるか、人間もっと正直に生きる
べきではないか、本当に考え悩みました。幸い愚息達も独立した頃であり生活に困らない程度の収入で
良く、また59歳から年金が出るシステムがあったため早期退職の道を選びましたが、退職直後、第二の
人生の仕事で大きくつまずきました。その時親身になって私達夫婦の行く末を案じてくれたのは、他なら
ぬ原田氏でした。私と家内は、自転車という共通のスポーツを通じて原田氏と10年間お付き合いさせて
いただいたのですが、更に人生のつまずきの苦境にあっても、親身になって私達のことを見守ってくれた
のです。ところが、平成16年2月10日に原田氏は、北海道警察の長年の忌まわしい裏金不正を実名告
発しました。表現を変えれば「現代版のパンドラの箱」です。この時私は札幌市内の民間企業に就職し
ていましたが、一人孤軍奮闘している姿に心を打たれ「今の安定した生活で良いのか、原田氏をバック
アップすべきでないのか」と自問自答し悩み続けました。導き出した結論は「立ち上がった行為を無駄に
してはならない」ということで、遂に私も原田氏に続いて行動を起こしたのです。

事前に原田氏と相談して示し合わせての行動ではありません。しかし北海道警察が、いち早い捜査で私
の所在を突き止め、接触を求めてきた時点で私は完全に逃げ場を失いました。ここでようやく原田氏と
連絡を取り札幌の市川守弘弁護士の元に駆け込み、北海道警察官時代の自らが関与した裏金不正の
全てを説明したのです。不正という認識を持ちつつ巨大な組織の中で1個の歯車として関与してきた自
分は、当時、人間としての良心のかけらも忘れ去り完全に正義感を麻痺させていたことは否定できない
事実です。原田氏や私の不正告発の結果、北海道警察ではそれまでの抗弁を徐々に後退させ、遂に
平成10年度から15年度までの6年間での不正予算執行に関して「不適正な執行事実」があった、と言
葉をすり替えて裏金問題を認めました。道警裏金問題で、返還総額は、962,729,116円となり
ました。

 しかし私の経験則からすれば、この6年間で捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)の裏金化は執行額
全てであり2,305,795,346円と推計されます。 

2 警察組織の抗弁に対する意見

(1)	捜査協力者保護の視点 
捜査協力者に迷惑がかかる、捜査上の秘密だ、と警察庁は言いますが、それは実際に捜査協力者とし
て偽領収書を書いているのは警察職員ですから自分たちの嘘がばれる、だから開示できないのであり、
警察組織の言う情報提供者の保護は、それに藉口した「全国の警察組織ぐるみ不正」を隠蔽するため
の言い訳に過ぎません。 

(2)  捜査費の執行率減少理由等 
ア)平成17年6月14日 参議院内閣委員会で警察庁安藤官房長は「情報収集に優れたベテラン捜査
員の大量退職やインターネット活用等で捜査手法が多様化した。もっと使えるように努力する」とこの場
に及んでも強がりの答弁を展開しています。しかし減少の最たる理由は、警察裏金問題が全国的に表
面化してきたため、現場が執行出来なくなったことを意味しています。北海道警察では、平成15年11月
末に旭川中央警察署の問題が発覚するまで不正を続けていたことは、複数の現職が私に語っています。
そして北海道警察の捜査費及び捜査用報償費の執行率は、平成15年11月末を境に激減しているのは
間違いないことです。ただ、全国の都道府県警察の今後の展開・方向性としては、執行率をゼロにする
訳にはいかないと思います。警察組織が懐にする裏金は減少しても、信用のおける警部昇任可能性の
高い警部補や警部・警視の幹部で偽領収書作りは続けるであろうし、支払精算書の作成も同様に幹部
(警部)のみの作成になるであろうと推測していますし、捜査諸雑費という小銭をかき集め裏金化する手
口も見逃せない、と思います。

イ)一方、愛媛県警察は県警捜査費問題で、粟野友介県警本部長が平成17年7月5日の県議会一般
質問において不正支出を一部認めた2001年度の捜査費をすべて対象にして内部調査することに対し
ては「自らの問題は自らの手で解決するとの強い決意を持って行う」と北海道警察と酷似した発言を行
い、外部調査の必要性を改めて否定しました。
また04年度の捜査費執行額の減少率が全国最大だった理由を「情報提供者が、存在が公になることを
恐れ謝礼を拒むようになったことなどの結果である」と説得力のない答弁に終始して外部監査を恐れて
いますが、これも全国の都道府県警察共通の現象です。

(3)  私的流用問題
警察は、「組織を離れての私的流用は確認されなかった。」との横並びの答弁に終始しています。私が
9月5日、松山地方裁判所に提出した「裏金メモ」でも明らかな通り、当時の署長に毎月現金を手渡して
いたのは紛れもない事実であるにもかかわらず、北海道監査委員による追及は甘く、平成17年5月に
行われた北海道監査委員の確認監査でも約3億9千万円の使途不明金が存在しながら、その解明取り
組みは曖昧なままの状態で推移しております。ちなみに私が退職時に署長に渡した裏金61,687円は、
新次長・警務・会計係が飲食店での懇親会費に全額費消したと聞知していますが、北海道警察の裏金
問題が噴出する以前のことですから、このようないい加減な税金使途がまかり通っていたのです。

(4)  終わりに 
北海道警察では、組織ぐるみの不正を「不適正な予算執行」と言葉をすり替え、また不正の実態・その
手口を北海道民の前に何一つ明らかにすることなく、恣意的に返還額を決めて国及び北海道に不適正
執行額を返還しました。また、北海道警察が情報公開非開示決定書では「(警察官などの氏名を開示
すると)警察を敵視する個人や団体からいやがらせを受けるなど警察活動に支障を来す恐れがある」と
表現に微妙な変化を見せておりますが、これは支払精算書を作成した警察官が監査などで追及された
場合、言い逃れができないことを恐れての口実に他なりませんし、これまで述べてきた私の体験からす
れば、捜査員等は予算執行実務担当者の依頼により機械的に支払精算書や偽領収書を作成している
だけです。警察庁をはじめ全国の都道府県警察は、もはや「捜査上の秘密」や「捜査協力者の保護」を
人質にして逃げ回っている時勢ではないとも思います。

全国の警察組織が抱える裏金問題を曖昧にすることこそが、日本の治安低下を招いている諸悪の根源
なのです。いま警察裏金問題を阻止しなければ、警察組織そのものの存亡の危機に直面するのみなら
ず、国民の生活安寧を今まで以上に脅かすことになると思っています。


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