警察見張番だより 第34号
(2011.03.20.)

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***34号もくじ***
● 代表就任あいさつ ・・・・・・・ 岡村共栄
● 市民のための警察組織に! ・・・・・・・ 木村幸造

● 北神弁護士意見陳述 ・・・・・・・北神英典

● 森川さん意見陳述 ・・・・・・・森川岳幸

● 相模原南署員の分限免職事件 ・・・・・・・ 戸田俊秀

● 大河原国賠弁論&集会報告 ・・・・・・・ 杉山寅次郎

● 見張り番2010年総会報告 ・・・・・・・ 鈴木 健

● 編集後記 ・・・・・・・ 生田典子

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 ● 代表就任あいさつ

(弁護士 岡村 共栄)

  このたび代表に就任いたしました岡村です。

 新聞の社会面を見ると警察の不祥事が記事になっていない日は少ないのではないかと思われるほど、 不祥事が多発しています。

 警察が権力を実力行使できる立場にあり、警察の内部が閉ざされた、市民の目からは見えない社会 であることから、不祥事が続発しているのではないかと思われます。

 民主主義国家であれば、警察のあらゆる面が公開され、市民の目で批判の対象とされて当然だと思います。

市民の人権を護る立場に立って、警察活動を厳しくウオッチングすることは、社会を明るくする運動 につながります。

 会員を増やし、大きな運動のうねりを作り出し、警察を変える活動に取り組みまし ょう。
 よろしくご支援のほどお願い申し上げます。


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● 市民のための警察組織に!

木村 幸造

 ここ数日の新聞・テレビで報道される警察官の不祥事の数の多さに、今更ながら驚いている。秋田で警察官が、 加害者と被害者を取り違え、事件の仲介をしていた被害者の弁護士の目の前で、加害者に殺害をさせてしまって いる。

 また、高齢者で無実だった人を、人一倍重量のある警察官が取り押さえて、体にながくまたがり、死亡させて しまっている。

 また、身内の白バイ警察官の交通事故を、事故を起こした警察官の都合の良いように、被害者を装って事故調 査書を作成していた。捜査をしっかり行わず、自殺と処理していたが、他の殺人事件との関連で事件とし、改め て殺人事件として捜査を始めた。

 他にも、事件性がないと処理されている被害者家族から、事件として捜査を求める訴えが、テレビで放映され ていた。

         警察官は、市民の安全な暮らしを護る法と正義の番人、崇高な職業として日夜業務に励んでいる人達である。 若い人達が、正義感に燃えて警察官を職業として選択している。

 しかし、警察の中枢が市民からかけ離れた秘密主義をとり、「裏金づくり」や「県警の不適切な会計処理」が 次々と明らかになあるにつれて正義感が揺らぎ、現場の警察官に法を守る気概が薄れれていくのではないだろうか。

警察のムラ組織を改め、市民の知る権利に応え、市民と共に存在する警察組織に1日も早くなることを願っている。

@次に、今警察見張番で支援している、神奈川県人事委員会に対する、神奈川県警分限免職処分取消審査請求 の第1回審査期日において陳述された代理人の陳述内容と、分限免職された警察官の陳述内容をご紹介します。           

以上


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● 北神弁護士の意見陳述

北神弁護士

1 はじめに
病気で欠勤を続け、正常に働くことはできないとして分限免職になったという警察官は過去にもいます。 1カ月以上も無断欠勤を続けて行方不明になり、分限免職になった警察官もいます。
しかし無断欠勤もせず、また、遅刻もしないで出勤を続けていたのに、分限免職になった警察官は、神 奈川県警では、森川岳幸さん以外に例がないのではないかと考えられます。

2 恣意的な処分理由
処分理由書には、森川さんが、勤務実績が良くないこと、及び警察官としての適格性がないことの理由 となる15もの事実が書き連ねてあります。しかしこれらの事実は、分限免職という警察官の身分をは く奪するという重大な処分を正当化できるものではありません。

例えば、処分理由の一つに「交際相手から住居侵入容疑で被害届を出された」ことが挙げられています。 ですが、この申し立て自体、その後の交際関係のこじれによる腹いせで、不当に申し立てられたとしか 言いようのないものでした。

なぜならば「自宅に住居侵入された」と申し立てられたその当日、その時間帯の直後、森川さんはその 交際相手の頼みで自宅の留守番をし、さらに交際相手の頼みを聞いて千葉に泊まりがけでドライブして いるからです。交際相手の平穏な生活を脅かすような侵入行為は、全く存在していないからです。 「警察署で作っている振り込め詐欺防止のチラシ作りを批判した」ことも挙げられています。

しかし、森川さんは、振り込め詐欺防止のチラシは、ほとんど配られないまま大半がごみになるので、 小さな警察署で8000部という大量の部数を作る資源の無駄を訴えただけでした。「こんなに作って も無駄ですよ」といった森川さんの発言は「こんなの作っても無駄ですよ」と、半ば恣意的にねじ曲げ られて報告され、処分の理由とされたのです。

「上司の指示に逆らい実況見分に立ち会ったときのメモの提出を拒んだ」というものもあります。 しかし実況見分メモの提出を拒んだのは、実況見分に立ち会ってもいない先輩警察官が、休んでいた森 川さんに代わって実況見分調書を作ろうとしたからでした。

「上司の承諾を得ないで海外旅行に行った」ということ自体は、事実です。しかし承諾を得ないで海外 旅行に行ったのは、上司の承諾を求めようとしたら、同行する女性の名前や結婚の意思を根掘り葉掘り 聞かれ、言わないと旅行を承諾しないといわれたからでした。

一緒に行こうとしていた女性と将来結婚するかどうかも分からないし、その女性自身が、何よりも森川 さんの上司に自分の名前や住所を教えてほしくないと言ったので、森川さんは、承諾のないまま旅行に 出かけたにすぎません。海外旅行に同行する女性の情報を根掘り葉掘り探索することが、警察にとって そんなに大切なことなのでしょうか。

それを話さないならば海外旅行を承諾しないと圧力をかけることに、何も問題はないのでしょうか。

森川さんが上司に対して「交番勤務に戻りたくないと言った」こと自体は事実です。なぜならば、交番 では、先輩から仮眠を取らせてもらえず、たくさんの手書きの書類を押し付けられ、何度書いても書き 直しを命じられていたからです。

宿直勤務は、本当ならば朝8時半に終わることになっています。しかし未処理の書類が山のように溜ま り、森川さんは勤務時間が過ぎても、夕方、ひどい時は夜まで帰宅することができませんでした。勤務 時間や休憩時間の決まりは守られず、新人の警察官や若い警察官ばかりに負担が押しつけられる交番勤 務の現実を改めようとしないで「交番勤務に戻りたくない」と言った森川さんを、勤務実績不良とか、 警察官の適格性がないとか決めつけることが本当に正しいのでしょうか。

3 懲罰的な「案内」業務
 森川さんは、平成18年10月から平成19年7月にかけて、警察学校に入校していた一時期を除き、 交番勤務を経験しました。しかし勤務の現実に、精神的に疲れてしまい、3か月間休んで療養をせざる を得なくなりました。

 森川さんはその後、職場に復帰したのですが、警察署では森川さんのために新しい仕事を用意してい ました。それは、警察署の1階のカウンターの外側の廊下に一つだけ置かれた机に座って、やってきた 市民に「案内」をするという仕事でした。森川さんが座る机の場所は、トイレのすぐ目の前でした。

ほとんどの署員は、森川さんを避けるように遠巻きに見るだけで、森川さんは、一人だけ懲罰を受けた ような気持ちで、小さくなって毎日を過ごしました。たまに、先輩や上司が話しかけてくれましたが、 ふた言目には「まだ辞めないの」というような心ない言葉を投げかけられていました。それでも、森川 さんは無視されるよりはうれしかったということです。

そして、その仕事を3ヵ月我慢した後の平成20年2月、森川さんは、地域1課の企画係に配置替えに なりました。

4 分限免職は取り消されるべきである
森川さんは、地域1課の企画係では、きちんと自転車の返還作業をこなしてきました。遅刻もなく、無 断欠勤もありませんでした。自転車返還作業で問題を起こしたこともありません。
上司や先輩からは、色眼鏡で見られ、厳しく勤務評定されてきました。しかし自転車の返還作業はきち んとこなしており、勤務実績が悪いわけではありません。 森川さんは、うそを付くことができない性格の人です。率直に本音の物言いをしてしまいます。場を読 むのが苦手と言えるかもしれません。

しかし森川さんには、警察官として地域の住民の安全を守っていきたいという純粋な意欲も、本当に悪 い人を捕まえて、社会と組織に貢献したいという意欲もあります。自転車返還の仕事をきちんとこなし てきたことからも分かる通り、能力がないわけでは決してありません。警察官としての適格性がないわ けでは断じてありません。

神奈川県警が、15個もの処分理由を挙げてきたのは、森川さんをクビにする決定的な理由がないこと を自白しているようなものです。免職に追い込めそうな理由が見つからないからこそ、たくさんの小さ な事実を無理にかき集めたのです。
しかも、それらは実質的には誇張であったり、評価が一方的であったり、と、およそ、そのまま処分の 前提にするには不相当な事実ばかりです。

地方公務員法27条1項には「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない」と定 められています。
当職らは、人事委員会におきまして、何よりも、処分理由の一つひとつの事実を、詳細かつ実質的にご 検討いただきたいと考えています。

そのようにご検討いただけるのであれば、必ずや、森川さんに対する分限免職処分が「公正でないもの」 として、取り消すべきであると最終判断いただけるものと確信しております。

以上


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● 森川さん意見陳述

第1 はじめに
 私は、平成22年3月5日、神奈川県警察官を分限免職になりました。
 処分理由書を一読すれば、いかにも私がやる気のない、できの悪い警察官であり、クビにされても 仕方がないと、思われるかもしれません。ですが、処分理由書や答弁書に書かれている事実は、本当 にあった出来事の断片を大げさに誇張しているものや、私がとった言動の本当の理由や背景事実を意 図的に無視しているものがほとんどです。「警察がまさかそんなことを」と思うかもしれませんが、 本当です。

 私は、私に警察官としてまだ未熟な点、至らない点があること自体を否定するつもりはありません が、私が神奈川県警の歴史の中できわめて稀な、現在の神奈川県警の警察官の中で唯一、警察官にふ さわしくない人間だという烙印を押されなければならない人間だとは思いません。

 私は、弱い人を助け、神奈川県民を守る仕事がしたいと思って、警察官を志望しました。処分を受 けた後、私は、その初心を毎日、思い起こしています。そしてもう一度、警察官として仕事がしたい という思いを新たにしています。

第2 交番勤務
 私が、相模原南警察署での交番勤務が好きでなかったことは事実です。
ただ、それは、地域の人たちとふれあう仕事や、地域の安全を守る仕事が嫌いだったからではありま せん。新任警察官を徹底的にしごきまくって鍛えるという神奈川県警の交番勤務の伝統、体質に、な じみ切れなかったからです。 

相模原南警察署の交番勤務の現場は、若い新任の警察官にとって過酷なものでした。勤務シフト上で は、交番勤務の警察官は、朝8時半から翌日8時半までの24時間勤務で、そのうち合計8時間は休 憩が取れることになっています。新任警察官もベテラン警察官も同じです。しかし、実態はまったく 違います。ベテラン警察官は勤務シフトどおりですが、新任警察官はすることが何も無くても朝6時 半には出勤しなければならず、帰りも朝8時半に終わることは一度もなく、早くて昼過ぎ、遅い時は そのまま夜まで勤務することもざらでした。

しかも新任の場合は、仮眠時間に、ほとんど一睡もとることが許されていません。私も、ペアを組む 先輩から「新任警察官というものは、一睡もしないで勤務するものだ」といわれ、実際、夜通し起き て待機していなければならず、本当につらい思いでした。少し仮眠をとるだけで書類について適切な 対応や事件や事故の対応についてまともに思考が働くのにと、当直のたびに思っていました。

そして、自転車の盗難事件や万引きなど事件の処理のために作成が義務付けられている書類は、基本 的に若い警察官がつくるものとされており、翌朝8時半以降も、それらの書類を書きあげるために残 業をしなければなりません。もちろん残業代は支給されません。

特につらかったのは、手書きで書き上げた書類を何回も何回も最初から書き直すよう命令されること でした。新任警察官の私についても、書類はすべて手書きで作成するように指示され、1つ、2つの 誤字があっただけで、全面的な書き直しをさせられていました。文書作成用のパソコンがあるのです から、パソコンを使えば、このような作業は必要ないはずです。それを、「若い警察官に厳しく教養 する」と称して強制しているのです。こんなことを強いる職場がほかにあるでしょうか。警察では、 どんなに理不尽でも上司の命令は絶対に守らなければならないという雰囲気が強く、少しでも疑問を 示すと、「反抗的だ」といわれ、「組織全体を敵に回すのか」と叱られます。

私も、当直明けの度にたまった実況見分調書などを書き上げようとして、夜まで残業しましたが、書 き直し命令が繰り返され、書類が処理し切れなくなり、未作成の書類が次第に溜まっていきました。 4回も5回も書き直しを命令された時には、書類を作り直す必要があるのかと疑問を感じて、つい、 疑問を口にしてしまったこともあります。

そうすると、間もなく、私は上司や先輩からにらまれるようになりました。私は「お前は、この組織 にいてはいけない」とか「お前は、大型免許を取得しているからバスの運転手になれよ」などといわ れるようになり、ペアを組む先輩からは「お前が俺の目の前で犯人に襲われても助けないからな」と 言われました。

 理不尽だと思ったことに対し「それは理不尽です」と小声でいうことも許されず、決められた睡眠 をとることも許されず、連日のサービス残業にも文句を言わずにやるというのが、相模原南警察署で 交番勤務をしている警察官の現実でした。

 このような実情でしたから、私は、精神的にも肉体的にも辛いだけの交番勤務に戻りたくないとい う気持ちになってしまったのです。

第3 摘発しやすい犯人を検挙
 現場の一線で働く警察官の多くは「本当に悪い奴を捕まえたい」と思っていますが、現実は、数合 わせのような検挙を日常的に行なっています。

 私は、親切心から放置自転車をアパートの借主にあげた管理人のおばさんを、刑事事件の犯人とし て摘発したことがあります。私にとって胸の痛む思い出です。

 摘発のきっかけは、私が自転車に乗った男性に職務質問をしたことでした。「自転車の検問をして いるのですが、それはあなたの自転車ですか」と声をかけると、男性は、「これは前のアパートに住 んでいた時の管理人のおばさんからもらいました」と答えました。私はさらに「その自転車は管理人 のおばさんの物だったのかな」と質問をしました。男性は「いいえ。アパートの前に何年も放置して いたらしいです。それを、私が引っ越す時にくれたものです」と答えました。

私が、先輩の巡査部長に報告すると、その先輩は「そのおばさんをやっちまおうぜ」と言いました。 先輩と男性の家を訪ね、さらにその管理人のおばさんを警察署に呼び出しました。 おばさんに話を聞くと、確かに、以前アパートに住んでいた人が放置して何年も経っていた自転車だ ったので、その男性にあげた、と説明しました。ところが、先輩は、笑顔で優しく「他人の物を勝手 にあげちゃいけないよ」と言って、占有離脱物横領罪の書類を作り、おばさんを、万引きや自転車盗 と変わらない微罪処分にしました。おばさんの指紋と写真まで撮って、自宅に帰しました。

私は、おばさんがそんなに社会的に非難されるようなことをしているとは思えず、つい「おばさんは 何にも悪くなかったのに、ごめんなさい」と言ってしまいました。ガックリしていたおばさんは「こ れも社会勉強よ」「何事にも3年、3年はつづけてみな、頑張ってね」と、かえって私が元気づけら れることになり、私は切ない思いになりました。

警察では、このような検挙活動をたくさんしないと「ダメな警察官」の烙印が押されるのです。 私は、自転車には被害届も出ておらず、持ち主がアパートから引っ越す際に放置していった自転車な ら事件が成立しないのではないかと思っていたので、後で、その先輩に「被害者が『被害届を出さな い』と言ったらどうするんですか」と質問をしました。先輩は「ならば、そいつを不法投棄でやれる よ」と言いました。

先輩はこうも言いました。「俺だって本当は巡回連絡とか地域の人達と接していく仕事がしたいよ。 でも今の組織はそれを望んでない。俺はこの署に来たばかりで、他の巡査部長たちと、どちらがよく 仕事ができるか天秤にかけられている。犯人を検挙する仕事をすれば上は認めるし、休憩時間もきち んと確保できる」。実感だと思いました。

私は、上司や別の先輩に、おばさんを検挙したことをほめられましたが、内心ではちっともうれしく ありませんでした。

第4 企画係の仕事
 平成20年2月、私は警察署地域1課の企画係に配属換えになりました。そこでの仕事は、相模原 市役所が回収した数百台の放置自転車のうち、被害届が出ているものを持ち主に返す、というもので した。市役所の職員やシルバーセンターの人達と協力して、2年間で400台以上の自転車を持ち主 に返しました。日本で毎年発生する刑法犯の3,4割が自転車窃盗やバイク窃盗です。被害者も加害 者も中高生がほとんどです。自分の自転車を盗まれた者がさらに他人の自転車を盗むという連鎖があ ります。盗難届けが出ている自転車を1日も早く持ち主に返してやることは、持ち主が喜ぶだけでな く、少年の非行化の防止にも役立つのです。

一部の上司や市の職員からは「今まで、放置自転車を持ち主に返す担当者がいなかったから、保管所 や警察署の裏庭に自転車が溜まってしまっていたけれど、君のおかげで助かっているよ」と言われま した。持ち主の家に直接、自転車を届けた際には、持ち主から感謝の言葉をかけられ、また、その機 会に、新たな相談を受けてアドバイスをしたこともあります。自転車保管所の方たちからは「あなた のような素直で話しやすい警察官がちゃんといて嬉しいよ」と言われ、本当にうれしく感じたことも あります。

そうした中で、今年3月5日、私は分限免職処分になりました。

第5 最後に
 私が未熟な警察官であることは、冒頭に申し上げたとおりです。しかし、私は警察官不適格者では ありません。現場の警察官として地域の住民のために働きたいという思いは変わっていません。1日 も早く現場の警察官の仕事に戻りたいと思います。 公正な判断を心からお願いいたします。

以上


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● 相模原南署員の分限免職事件

(日本国民救援会 田戸俊秀)

「警察法」第二条は「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、 被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」

「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、 不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわた る等その権限を濫用することがあってはならない。」と警察官とその職務遂行のあり様を定めている。

しかし、私たち救援会が関わる事件の多くがこの条文が空洞化していることを示している。 その典型が現在最高裁に係属している国家公務員がビラを配布した事で「国家公務員法違反」を理由 に逮捕した2事件で、「普遍不党かつ公平中正」など空文句になっている。

ビラ配布問題では、この他に自衛隊の官舎へのビラ配布やマンションへのビラ配布を「住居侵入罪」 として逮捕した事件を見てもわかるように時の権力に都合の悪い内容のビラを配布した者をターゲッ トにしていることは明らかである。 このような世に知られた大きな事件でなくても、職務質問をノルマ化し、職務質問に応じない場合に は警察署まで“連行”して指紋押捺、写真撮影まで行うことが常態化しており、救援会にも相談が耐 えない。

 警察本来の任務から逸脱しているこのような実態を疑問に思っている警察官も少なくないであろう が、それを告発したり警察内部で問題にすることは勇気がいることであり、それらを問題にすれば多 くの場合、何らかの理由をつけて退職においやられている。

 今回、相模原南署で分限免職処分を受けた警察官・森川岳幸氏の例もその類であろう。森川氏は免 職処分を不服として神奈川県人事委員会に免職取消し請求を行ない、9月2日に第一回の口頭審理が行 われた。

 森川氏の陳述によれば「数合わせのような検挙」を日常的に行っているため「摘発しやすい犯人を 検挙」しており、「このような検挙活動をたくさんしないと“ダメな警察官”の烙印が押される」、 自分は「弱い人を助け、神奈川県民を守る仕事がしたい」「本当の悪い奴を捕まえたい」と言う。 このような正義感に満ちた森川氏であるから、交番勤務でいじめを受け、最終的に「勤務実績が良く ない」「警察官としての的確性に欠ける」との理不尽なレッテルを貼られて免職処分を受けたものと 思われる。

警察組織に労働組合が認められないとか、民主的な運営がなされていないなど多くの問題があるが、 このように具体的に発生した不当な処分と一つ一つ闘って勝利していくことが、それらの問題点の解 決につながるのであるから、この闘いは単に森川氏一人の問題ではない。

その意味で人事委員会に不服申し立てをして闘いに立ち上がった森川氏に敬意を表したいし、免職を 撤回させて職場に戻り警察組織の民主化と国民の為の警察にするよう奮闘していただきたい。 そのために、微力ながら応援したいと思っている。

以上


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● 大河原国賠弁論&集会報告

(杉山寅次郎)

大河原宗平さんが訴えている訴訟は現在2つある。@デッチアゲ逮捕に起因する「懲戒免職処分」の 「取消訴訟」と、Aデッチアゲ逮捕による冤罪被害の損害を賠償請求している「国家賠償請求訴訟」 である。現職の警部補がデッチアゲ逮捕されるという異常事態なのである。

11月5日(金)前橋地裁、大河原さんの国賠弁論があり、結審した(西口元裁判長、水橋巌、渡邉 明子裁判官)。判決は、来年3月18日(金)午後2時に言い渡される。

 傍聴席の最前列には、鹿児島県阿久根市の副市長として多忙な仙波敏郎さん、布川事件で29年間 服役させられていた桜井昌司さんの姿があった。

 この日は、それまでの証拠の整理と最終弁論だった。ただし、実際に口頭で主張した大河原さんの 側だけであり、被告群馬県警側は、「書面記載の通り」と言うだけ。ヤブヘビになることをひたすら 避ける戦法と見えた。 

 最終弁論として、大河原さん本人が意見を述べた。

 私の経歴〜同期100人中トップで警部補に
 採用後5年で巡査部長に、さらに5年後の昭和57年には警部補に昇進。これは同期100人中トップ の昇進だった。

 ニセの会計書類に抗議 〜「危険人物」として左遷
 県警本部交通指導課勤務の際、実際には払ってもいない情報提供者への架空の会計書類を書かされ た。それに抗議してから「裏金告発の危険人物」とマークされ、翌年左遷された。現職の中曽根首相 らの警護を務めたことのある大河原さんのような警察官ですら、「裏金」に抗えば酷いことになると いう象徴的な事態だ。「捜査能力」よりも「裏金」が警察では優先することが図らずもよくわかる。

尾行の開始 〜テレビ局からの取材
 2003年8月以降、尾行が始まった。さらに翌9月には突然県警本部監察官室へ呼び出され「不倫」 について始末書を強要された。事実では全くないので拒否。対立が深まった。監察官室の言う「不倫」 はとんでもない言いがかりだった。警察官は勤務時間外であっても警察官と見られ相談事を受けるも のだ。所轄署が対応してくれなくて困っている人は誰であれ放っておくことはできない。できる範囲 でのアドバイスや手伝いはしてあげるのが人情だ。しかもこの事案は、放っておけば、桶川ストーカ ー殺人事件と同じ道を歩んだかもしれないものだった。

 なお、当時、高知県警の〈裏金〉問題を地方紙が追及、日本中の警察で「裏金告発をするような危 険人物探し」が行われていた。群馬県警が、そうした「危険人物」の筆頭に大河原さんを考えていた ことは間違いない。

 2003年11月、民放のテレビ番組で、北海道警の裏金問題が取り上げられ、大河原さんも匿名で、 「群馬県警でも行われている」とテレビカメラの前で話し、その内容は2004年2月放映された。

県警によるでっちあげ逮捕 〜平成16年2月16日
 大河原さんに対する強制捜査の根拠は、「ナンバーの紙コピー」を自動車前部に取り付けていたこ とが「道路運送車両法上の偽造ナンバーの使用に当たる」というものだった。しかし2月16日に捜 査員から示された差押許可状には他人名義の「トヨタマークU」としか書いてなかったため、自分に 対する捜査だとは思いもよらなかった。捜査員らは、夫からの暴力に苦しむ被害女性を自動車内に閉 じ込めたりしていたので、初めは、この女性に対する捜査かと思い大河原さんはじっとしていた。

   「差し押さえられたナンバーを破棄した」というのも事実ではない。捜査員が「まだ差し押さえて いない」ということを捜査員から確認していた。差押対象物はあくまでも「車」であってナンバーだ とは思わなかった。

 あとから作られた逮捕事実 〜群馬県警の実態
 体当たりの公務執行妨害(刑法95条)もデッチ上げだ。現行犯逮捕の理由は、大河原さんが自分で つけた紙ナンバーを引き?したことについて、間接暴行による公務執行妨害罪が成立するというもの だった。県警で弁解録取書を作成する際の罪名は「公務執行妨害罪(注・間接暴行)」と「証拠隠滅」 だった。しかし、@証拠隠滅には条文上該当しないこと(「他人の刑事事件」でなければならない)。 A間接暴行が成立するかどうかもあいまいだったこと、それらにより、県警側が後から「伊藤警視に 対する体当たり」に逮捕事実を変更してきた。現行犯逮捕後、現行犯逮捕の被疑事実を変更してしま うとは、全くデタラメな現行犯逮捕だ。

逮捕事実を否認しているのに「起訴猶予」の不思議
 群馬県警は「当時警部補だった大河原さんが他の警察官に体当たりをして怪我をさせた」と主張し ている(体当たりによる公務執行妨害罪)。大河原さんは一貫してそのような事実は無いと否認して いる。もし体当たりが事実であり、それを被疑者である大河原さんが否認し続けているとすれば、こ れは相当悪質な事案だということになる。がしかし、そのような事案が、本来は、深く罪を認めて反 省している場合に適用になる「起訴猶予処分」でだったというのでは整合性が全くなかろう。そして、 このような(事実ではない)体当たりによる「公務執行妨害罪」を理由とした懲戒免職は全く不当で あろう。

「犯罪者」としての烙印を押されて
 大河原さんは県警の発表をそのまま記事にした多くの新聞報道などにより「現職警察官でありなが ら重罪の犯罪者」との烙印を押された。年賀状も来なくなった。長期にわたる人事委員会による審査 や裁判だった。やっと結審を迎えることができ、あとは早期に判決を出して頂き、県警に戻って仲間 と仲良く明るい警察の職場で勤務がしたい。犯罪者との烙印で剣道場への出入りも自粛させられてい る。趣味でもあり特技でもある「剣道」を地域の子ども達と楽しく一緒にしたい。概要、以上のよう に大河原さんは締めくくった。

 裁判報告会 布川事件の桜井さんが挨拶
 裁判後、群馬県弁護士会館で、報告会が開かれた。「県警の主張が誤りであることの立証をした。 たとえ、その主張が誤りでないとしても、県警のやったことは、懲戒権の濫用だといういわば2本立 てで裁判所には訴えた」 と清水弁護士。

 続いて、43年前に起きた布川事件で、殺人犯の汚名を着せられ、29年間刑務所に服役させられてい た桜井昌司さんがマイクを握った。桜井さんは今から43年前、20歳の時、殺人事件の犯人として扱わ れた。あそこまで警察がウソをつくとは、当時は思ってもみなかった。今の群馬県民や、日本の多く の人が、あの時の大河原さんと似たような感覚でいるのではないだろうか、と。 桜井さんの場合も、 アリバイはちゃんとあった。それを警察は35年間隠し続けた。

「鑑識官は『桜井さんと杉山の2人に指紋を合わせろ』と指示された。私は『どうやって便所の 窓枠を壊したのか、やってみろ』と言われた。警察は、窓枠を握らせて、そこから私の指紋をとり、 私を犯人に仕立て上げようとした」

「こういうことをやっている警察や検察がどうして許されるのか?私は前々から〈捜査過失罪〉を 創設せよ、と言っているところだ。」

 会場では、窓枠を握らせて指紋を取るような方法に驚きの声があがると同時に「今も、方法は変わ らない。缶コーヒーを勧めて、あとで缶に残った指紋を採取して警察の都合のいいように利用する方 法などは現在も行われていることだ」との発言もあった。

 法廷に続き、報告会最後にも、大河原さんが挨拶をした。
 「ニセの会計処理(裏金)に抗議してから14年、懲戒免職(平成16年3月)になってから6年8ケ月 が経った。最初はたった一人での闘いだったが、今は〈支える会〉の会員も600名を数えている。今日、 結審というひとつの節目を迎えた。早く正義にかなった判決をもらい、名誉を回復したい」と。

 なお、この5日の報告集会は、ジャーナリスト岩上安身氏らのご協力によりユーストリームによる インターネット生中継が行われた。

11月6日(土)午後、「阿久根市政緊急報告会」が、かんぽの宿・磯部で行われた。主催者は、大 桃聰(おおもも・さとし)新潟県魚沼市議会議員。ゲストは、竹原信一阿久根市長と仙波敏郎副市長。 インタビュアーとして警察ジャーナリストの寺澤有さん。寺澤さんの厳しい突っ込みに対しても、竹 原市長は独自の哲学に基づき、平静に応えていた。

11月7日(日)午後、「大河原国賠支援学習会」が安中市文化センターで行われた。「犯罪に関す るマスコミの報道姿勢」と銘打って、浅野健一

同志社大学教授と盟友のジャーナリスト山口正紀さんのお話。浅野教授は、教授らしからぬ漫談調で 会場を笑わせた。山口さんは、「布川事件」「足利事件」を例にとり、論理的に説明。大河原さんの 事件に繋げて分かりやすく解説した。

★☆★ 写真省略 ★☆★ 

◇上の写真――巨大な群馬県警本部と軽トラック。大河原さんがたった一人で闘いを始めた当初の、 県警との力関係を象徴している。しかし、今や、大河原さんを支援する声は大きくなる一方で、“街 宣車”を駆る大河原氏に声をかけて来る県民も多いという。裁判が終わると、コソコソと県警本部に 逃げ帰る県警幹部たち。大挙して裁判所にやってきて、大河原さんを激励しながら帰って行く支援者 たち。〈正義〉がどこにあるかは、一目瞭然だ。

※11月7日、安中集会終了後の懇親会の折、竹原信一阿久根市長から、大河原さんに対する阿久根市 総務課長への就任要請が発表された。その場の懇親会参加者は阿久根行きを圧倒的に支持した。もっ とも、弁護団&支える会全体では、賛否は大きく分かれた。  このような状況の下、大河原さんは阿久根市「総務課長」への途を選択した。本稿作成中の12月5 日(日)午後10時現在、将に阿久根市長の解職の是非を問う住民投票が開票集計されている。結果は 極めて流動的であるが、大河原宗平さんに「幸多かれ!」と心より願わざるをえない。  今後とも、より一層のご支援・ご協力をよろしくお願いします。

(三上英次氏のご許可を得て、JANJAN blog 報告記事より大幅に要約・引用させていただき、 写真も転載させていただきました。(写真省略)

三上氏のご寛容に心より感謝申し上げます。)
http://www.janjanblog.com/archives/22407

以上


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● 見張り番2010年総会報告

弁護士 鈴木 健

 去る7月31日、県民サポートセンター304号室において、警察見張番2010年総会が行われた。

 講演は、高知県人事委員会で懲戒免職が取り消された窪内孝志さん事件の勝利報告を、弁護団の清水 勉先生にしていただき、また、警察見張番でも支援している、神奈川県警警察官分限免職に対する人事 委員会審査請求申立について、弁護団の北神英典先生に解説していただいた(こちらの事件については、 北神先生と森川さんの原稿を別に掲載しましたので、そちらをお読み下さい)。

 総会事項としては、1年間の活動報告及び次年度の活動方針を確認し、決算・予算及び人事案の承認 が行われた。

 今回は、警察見張番設立当初より共同代表を務めていただいた、佐久間哲雄先生が亡くなり、また、 北川善英先生もロースクール等で多忙を極められていらっしゃるため勇退、新たに、弁護士の岡村共栄 先生に代表に就任していただいた。

 今年2月に発覚した神奈川県警の不適正経理に関し、送付した質問状に対する回答内容及び情報公開 請求に対する相変わらずの黒塗りだらけの公開状況からして、神奈川県警の体質は、不祥事が続発した 平成11年当時と何ら変わっていないことが確認されました。今後も、神奈川県警がよりよい県警とな るための地道な活動を続けていきたいと考えています。

以上


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***● 編集後記***

前号でも書きましたが、相変わらず私の体調が思わしくなくて、今回の「見張番だより」の発行が遅く なったばかりでなく、十分な編集が出来ず、申し訳なく思っております。

次号発行までには、何とかガンバッテ元氣になりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

(生田典子)


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