警察見張番だより2号の2
(2001.01.11.)

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***** もくじ *****

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● 「保土ヶ谷事件」を傍聴して  (犀川 博正)

● 警察の「人権」ってどういう意味 ?  (本郷 敏子)  

● 老爺の ひとりごと   (杉本 三郎)

● 神奈川県警の「不祥事」は、交通事故にも関係あり !  (工藤 昇)

● 事務局からのお知らせ

● 編集後記


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● 「保土ヶ谷事件」を傍聴して  (犀川 博正)
 警察が身内の不始末を隠蔽しようとすると、ウソを取りつくろうために、次から次にウソ
を塗り重ねざるを得なくなる。最終的にウソがばれると、警察幹部がマスコミの前で深々と
頭を下げる。そういう光景が神奈川県警においてくり返されようとしている。「保土ヶ谷事
件」の民事裁判で、そういう事態が今、静かに進行しているのだ。
「保土ヶ谷事件」とは、警察組織が警察官の犯罪を隠蔽するため、死亡者の死因をまじめに
検分することなくテキトーに"病死"と断定してしまったのではないか、という恐ろしい事件
なのである。
この事件については多くの目撃者や関係者がいて、彼らの証言は交通事故死を裏付けるもの
ばかりなのだ。交通事故によって瀕死の状態に陥ったK氏が、警察官によって放置され、死
亡してしまった。そのことについては証言だけではなく、物証もある。現場に臨場した警察
官によるその犯罪を隠蔽するために、あろうことか警察や監察医J医師は「心筋梗塞による
病死」と断定した。
 遺族をはじめ、複数の葬儀社の人は「遺体には解剖をした痕跡はなかった」と証言してい
る。ところがそのJ医師は、昨年の7月10日、法廷で心筋梗塞と判断した理由について
「遺体を解剖した」「(その際摘出した)心臓は今も保存してある」と証言。死因は心筋梗
塞という"物的証拠"の存在を明言したのである。
 J医師がその心臓を証拠として提出してくれて、遺体にメスを入れることなく心臓を摘出
する"手品"のタネ明かしをしてくれれば、遺族のK夫人も我々も納得できるのである。

2000年12月1日、横浜地裁民事仮庁舎における公判は、原告と被告弁護人の「臓器
(心臓)を早く提出していただきたい」「はい出します」というやりとりだけで終わってし
まった。
原告側は、遺体は解剖されていないはずだと主張している。それはそうだろう、遺体には解
剖を受ければ当然残るはずの縫い目がなかったというのだから。解剖していないのに心臓が
保存されているわけがない。原告側は臓器を提出できるわけがない、出せるものなら出せと
主張している。これに対して被告側の答えは「はい出します」だった。法廷におけるこんな
奇妙なやりとりは、前代未聞というべきだろう。
J医師は、いったい誰の心臓を提出しようとしているのか?それがこの裁判における最大の
注目点である。
次回1月19日の公判では、いよいよ臓器が提出され、それが本人のものであることを確認
するDNA鑑定の手続きが進むものと期待される。多くのみなさんの傍聴を期待したい。

この事件は、驚いたことに3年以上も前に発生しているのである。最初の段階で警察や監察
医がK氏の死因についてきちっと説明していれば、裁判で争うという事態にならずに済んだ。
ところが事件発生当初から警察と監察医の遺族に対する説明は二転三転した。なにかが隠さ
れていると感じたK夫人は、警察やJ医師の説明に納得できずに争ってきたのである。
 検死というものは死亡原因が病死か自殺か他殺かなどを判定するために行われる。必要が
あれば、解剖が行われる。
本件の場合、真実を究明するその一連の流れのなかにウソやごまかしが入っていると疑われ
る。殺人事件が起きてもそれが当局の故意や怠慢で、病死と判断されてしまえば、犯罪捜査
は行われないのである。捜査が行われないのであれば事件は闇に葬られてしまうのだ。警察
当局を信用できない状態が続く限り、神奈川県の治安は確保されているとは言えない。

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● 警察の「人権」ってどういう意味 ?  (本郷 敏子)
 昨年11月22日、参議院の地方行政警察委員会で警察法改正問題を審議を傍聴する機会
がありました。審議の中で、神奈川県警の学校校歌と、あの県警「不祥事」事件が対比され
る場面がありました。政府参考人として、石川重明もと警察本部長は、「歌詞の内容は、法
と正義の厳しさ、あるいは治安の尊さを学ぶ姿勢を志気高く歌い上げている」と述べていま
したが、あの一連の事件は、その校歌の精神とあまりにもかけ離れていることに改めて、呆
れ果てました。審議の中で、畑野議員(神奈川選出議員・盗聴事件住民訴訟原告の一人)が、
「警察の組織に、人権を尊重するという意識があれば、ああいう事件は起きなかった」と述
べられましたが、警察の起こしたどの「不祥事」事件を考えても、その通りだと思います。
そして、緒方宅盗聴事件の神奈川住民訴訟に関わった私の体験を思い出しました。権力側の
盗聴そのものが、個人・家族・友人・知人のプライバシーの侵害でありますし、人権を踏み
にじるものです。私も、この事件を断罪した裁判所の判決にしたがって緒方さんや、神奈川
県民への謝罪を求めて、何度も県警本部庁舎へ行きました。けれども、未だに謝罪はありま
せん。それどころか、その時の対応の横柄さは、今思い出しても不愉快になります。

 「地方行政警察委員会」で、政府側が「都道府県の警察学校では、基本的人権教育をしっ
かりやっている」と答えたのに対して、畑野議員が「その教科書を開示して欲しい」と求め
たところ、その答えは「公開することができない情報が含まれているから、手直しをしてか
ら」というものでした。

 また、畑野議員は「警察官自身の人権の保証」についても指摘していましたが、確かに事
件発覚直後に2人の自殺者が出ています。一方で、盗聴事件に関係した警察エリート達の場
合は昇進していく、という不思議な現象があります。事件発覚当時の県警幹部は長野県警本
部長に、 同県の泥棒事件が発覚するや、中央警察学校の副校長(校長?)、名古屋方面管区
の本部長などなどに昇進しているのですから。しみじみと、警察行政そのものを監視してい
く独立した組織、また、私たちの「警察見張番」のように市民による外部監察的組織の必要
性を痛感しています。

 まだまだ、日本の警察が市民に信頼されるレベルになるには、「道程遠し」の思いがあり
ますが、市民の監視の目を、行動で持続させることが大切だと思っています。

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● 老爺の ひとりごと   (杉本 三郎)
 新聞を広げると、「組織が病み、危機的な状況・・・県警本部長が訓示!」という記事が
目に入りました。記事(1/5付朝日新聞)によれば、1月4日の年頭の訓示で、県警○○
本部長は「県警の全職員が、このことを心底から認識し、県警再生への決意を新たにしてほ
しい」と語ったとあります。さらに「度を越えた温情主義、かばい合いは、返って組織のた
めになりません」とも述べたそうです。こんな一片の言葉で警察官僚の意識が変わると思っ
ているんですかねえ。ノーテンキを通り越して、呆れかえるのヒックリかえるのオソマツじ
ゃよ。

  わたしは、昨年から警察不祥事(フツウならば犯罪)などというゴマカシ言葉で市民の眼
をそらす、ずるい記事(記事がずるいのじゃないよ)を集めていますが、カラスの鳴かない
日はあれど、警察犯罪のない新聞記事はありません。開いた口がフサガリマセン!歌舞伎の
セリフではないが、「浜の真砂は尽きるとも、世に○○の種はつきまじ」じゃあござんせん
か。刷新会議などというエライ人(?)を集めてインチキ宣言をバラマイテも市民は信用し
ませんよ。日本全体の官僚組織が腐敗しているんです。警察官僚の中でも良心的な人がいる
と思いますが、砂浜の中でダイヤモンドを探すようなものかもしれませんな。そのような人
がいたら、一緒に協力して活動したいもんです。

 同じ日の新聞で「横浜市の在宅当番医制度」が廃止されたという記事がありました。会計
監査院の指摘で、23年間も続いた制度が、現在では無用のものになっているんです。税金
のムダ遣いとして、「よこはま市民オンブズマン」が廃止の火付け役の片棒を担いだんです
から、嬉しいねえ。年間約7千万円の委託事業費だったんですぞ!  国、県、市町村が3分
の1ずつ費用を負担し、97年、98年の両年度で大阪と鳥取県を除く45都道府県内の
740の事業主体に国庫補助だけでも総額約20億円が交付されていたんですぞ。同制度を
めぐっては、横浜市医師会が運用実態がないのに、国と県から20年あまりで10億円以上
を受け取っていたというんですから、アタマに血がのぼりますよ。おっと、警察問題から脱
線してしもうたわい。すまん、すまん。

 最初に書いたように、わたしは、警察関係の新聞記事のスクラップを作っておりますが、
置き場がないほど溜まっております。わが「見張番」の棚が乱雑になっとるのは、わたしの
整理が下手なのじゃあなくて、記事が多過ぎるっていうわけですな。つまり、警察犯罪が多
いという訳じゃね。関心のある人は、いつでも読みに来てください。ついでに棚も整理して
おくんなさい。頼みまっせ。
 
  だいたい、わたしが忙しいのも警察が「まとも」じゃないからで、この人たちを「まとも」
にするために、仕方ないねえ、もう少し老骨にムチ打って頑張ることにしよう。

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● 神奈川県警の「不祥事」は、交通事故にも関係あり ! 
 (工藤 昇)
           
 交通行政市民オンブズマンは、平成10年11月4日発足した、弁護士や学者(法学、
人間工学)を中心メンバーとするNGOです。このオンブズマンの目標は、道路ユーザー
の視点から道路の危険性を検証し、事故が起きる前に危険の芽を摘み取ることによって、
交通事故を事前に防ぐ、というものです。この目的のため、私たちは次のような活動を行
っています。
1 危ない道路に関する情報の収集と公開
 事故を未然に防ぐためには、道路のどのような場所が危ないのか、どのような場所でど
のような事故が起きがちであるかを、道路利用者が十分に知らされている必要があります。
何が危ないのか分からなければ、注意のしようもないからです。
 そこでオンブズマンでは、多くの道路利用者の方から、日ごろ道路を利用していて危険
だと思っている場所や、現に危ない目に遭ったというような場所についての情報を寄せて
もらい、これをインターネットで公開し、多くのドライバーに危険情報を共有してもらう、
という作業をしています。
(ホームページは----「http://plaza18.mbn.or.jp/~dangerousroad/」です)。

 情報は、電子メールや郵便でお寄せいただいておりますが、このほか、これまでに2回
「危ない道路110番」という電話相談会を実施しています。110番では、わずか数時
間で電話とファックスで200件あまりの情報が寄せられ、いかに多くの市民が道路の問
題に関心を持っているかを改めて痛感させられました。

 因みに、110番に寄せられた情報で、もっとも多かったのは、「歩道が必要」とする
意見で、全体の2割を占めました。その他、「右折専用の信号が必要」「信号の新設が必
要」など、身近な危険についての不安、不満が多く寄せられました。
2 行政に対する改善要求
 このようにして得られた情報の中で、特に危険であり、改善の必要があると思われるも
のについては、オンブズマンの名で責任行政機関に危険を指摘し、改善を求めていくこと
を予定しています。また、将来的には危険情報をデーターベース化し、仮に行政が改善要
求を無視した結果、危惧された事故が起きてしまったような場合には、各地の弁護士が迅
速に行政の法的責任を追及できるような態勢にしていきたいと考えています。

3 危険な道路の研究
 危険情報が集中した道路については、何が問題であるのか、弁護士や学者が検証し、安
全対策を研究していきます。これまでに取り上げたものとしては、次のようなものがあり
ます。
@「時差式信号」(一方の信号が赤になった後も、反対車線側の信号がしばらくの間青・
 黄色のままになっている信号で、右折車両が、信号が赤になったのを見て、反対側の信
 号も赤になったと誤解し、発進してしまい、直進車と衝突する事故が報告されている)
A「非分離信号」(車両と歩行者の信号が同時に青になる信号で、歩行者と右左折車両が
 錯綜することによる危険が指摘され始めている。)
B「右折レーン」(直進車線と思って走っていると、突然右折レーンになってしまうよう
 な道路の問題)こうした問題は、これまで、多少の危険があっても、当たり前のものと
 して、放置されてきたものばかりです。オンブズマンとしては、今後も柔軟な視線で道
 路を研究し、「危ないのが当然」とされる道路のあり方に疑問を提起していきたいと考
 えています。

 ところで、交通行政市民オンブズマンの発足は、神奈川県警のある不祥事に大きく関わ
っています。
 平成8年10月、横須賀市内の時差式信号交差点で、右折車と直進車双方のドライバー
が、信号の時差に気がつかなかったために衝突事故になり、一人が死亡するという交通事
故が起きました。この裁判の過程で、実は、昭和49年には、警察庁が全国の警察に対し、
時差式信号が交通事故を引き起こす危険性が高いことを指摘し、時差があることが分かる
標示板をつけたり、右折禁止規制を取るよう指示していたことが分かりました。驚くこと
に、全国の警察の中で、神奈川県警だけは、4半世紀にわたってこの指示を守らず、ドラ
イバーを裏切り続けていたのです。私は、この事件の刑事裁判で弁護人を勤めたことから、
交通事故はドライバーの不注意だけではなく、行政の無責任によっても引き起こされるも
のであることを痛感しました。(*下線は編集子)

 これまでわが国では、事故が起きると、ドライバーの責任や処罰だけが問題とされ、事
故の再発防止のための施策、特に行政責任の追及はあまり注目がされていませんでした。
しかし、これだけ多くの人が自動車を運転している現代社会において、「注意すれば事故
は起きない」という精神論だけで事故を防ぐということは不可能です。毎年1万人前後の
方が道路で命を失っているという厳然たる事実が、「事故不注意論」を超えた新たな事故
防止対策の必要性を訴えているのです。
 私たちは、事故防止のためにもっとも大事なことは、人間の不注意を事故に結びつかせ
ないための工夫だと考えています。2度と事故を起こさないための工夫をこらすためには、
事故の教訓に学び、道路利用者の声に耳を傾け、道路をより安全なものにするため、不断
に努力を続けることが必要です。私たちは、道路を市民に提供している行政が真剣にこの
努力を続けていくよう求め、監視していくことを使命と考えています。
(*工藤弁護士は、交通行政市民オンブズマン代表であると同時に、「警察見張番」の代表
でもあります。)

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● 事務局からのお知らせ
           
第二回「警察見張番」定例会を下記の要領で開きます。ふるってご参加ください。
と き:2月8日 6時より
場 所:開港記念会館9号室
    横浜市中区本町1-6
電 話 045-281-0708
参加費:若 干
ゲストスピーカー: 岩村智文 弁護士
           外国の「警察」情報などについてお話してくださいます。

目次へ :
編集後記:
 21世紀が始まりました。時間の区切りは人為的なものですが、人間の知恵でもあります。
やはり「やるぞ」と、思いも新たになりますからね。

今年は、情報公開法、改正された警察法も施行されます。当然「見張番」の仕事も具体的に
なるはず。2月には、第2回定例会もあります。大勢の方が参加することを期待しています。
今年は声と汗を出していきましょう。
                           (生田典子)


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