警察見張番だより第7号の2
(2002年5月21日)

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● 「暴走族」一掃の可能性  (藤田 温久)

●  事務局より

● 編集後記


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● 「暴走族」一掃の可能性  (弁護士 藤田 温久)
 広島市が暴走族の集会を禁止する罰則付きの条例を制定したそうです。広島の平和公園
などで、祭や週末に繰り広げられる暴走族の集会が市民生活を脅かしていることが原因だ
ということです。

  お定まりの特攻服やおどろおどろしい右翼風の服を着て、整列し、彼らの言うところの
「気合い」を入れられたりしている暴走族をテレビで見たり、彼らが行う暴走行為や傷害
・恐喝などの犯罪行為の報道を見れば、ほとんどの人が禁圧の必要を感じるのは当然だと
思います。しかし、そのような暴走族禁圧を求める無数の国民の声があるにも拘らず、
既に4半世紀、暴走族は存続し続けています。

  私は、近年数年間にわたり、暴走族同士の抗争によるリンチ殺人事件(刑事では傷害致
死)の被害者遺族の代理人として50人以上の加害少年を相手にした損害賠償請求訴訟を
担当し、暴走族を生み出す社会的基盤、メカニズムが根深いことを実感しました。

  まず、50人以上の加害少年の家庭の圧倒的多数は、両親が低学歴、若年結婚、若年出
産し、その結果若く、低所得階層(多くが、日給労働者か、自営とは名ばかりの零細下請
労働者であり、暴力団と親和性がある職場)に属していました。少年本人も事件前後を問
わず同様でした。更に、両親が離婚・別居している者も多く、多重債務者も相当数に上っ
ていました。相対的貧困と暴力団に対する親和性、及び家庭環境の崩壊が、暴走族を生み
出す社会的基盤と考えざるを得ないと思います。
  
また、暴走族に対する暴力団による系列化も顕著でした。暴走族同士の抗争の背景には暴
力団同士の繩張争いがあったのです。この事件では、暴力団構成員が直接、抗争の作戦を
立案し、指揮命令を行っており、少年たちは手駒にされていたわけです。暴走族は、暴力
団に対し上納金も支払っていました。このような状態ですから、暴力団は暴走族の組織化
にも乗り出しており(中学の先輩後輩などの名を借りて)、暴走族の幹部は、深く暴力団
に影響されていました。被害者遺族に対する和解に応じたのは、責任の軽い末端の少年た
ちが大半であり、責任が重い幹部たちは、あくまで人に責任を押しつけ自分は責任を逃れ
ようとするという卑劣な暴力団体質でした。

  このような、暴走族少年に対し、警備公安の警察官が「思想善導」と称して右翼団体へ
の加入を勧めたり、日常的に小遣いをやるなどしていたことが報道され問題となったこと
がありましたが、そこまで露骨ではないにしろ、この事件でも警察の暴走族「泳がせ」が
遠因になっていることは間違いないところでした。加害少年のうち少なくも幹部には多数
の前歴があり、直近には抗争事件に関連した悽惨なリンチ事件複数に関与していたにも拘
らず、警察は加害少年らを放置していたのです。深夜の騒音被害に耐えかねた住民が道路
にロ−プを張り暴走族少年の首を引っかけて殺してしまった事件でも、住民の度重なる苦
情にも警察がなかなか動いてくれなかったという背景があったことを思い出します。

  はじめに書いた広島市の条例も、これまでの暴走族に対する規制立法、条例と同様に、
仮に暴走族の集会を部分的に禁圧することはできても、暴走族を一掃することにはつなが
らないことは、ご理解頂けたと思います。しかし、実は、盗聴法をはじめとする警察の権
限を次々と拡大する立法と同じ構図が、広島市の条例にもみえます。つまり、現行法をも
ってしても十分に取り締まれる暴走族の集会に対し、わざわざ条例を作り、結局は警察の
権限を拡大するという構図です。換言すれば、警察は暴力団と癒着し、暴力団を泳がせな
がら、逆に暴力団対策を口実に次々と警察の権限を拡大する立法を行うことができるのと
同じく、暴走族を必要としているのです。

  社会的基盤と共にこのメカニズムを崩壊させない限り、暴走族を一掃することは困難な
のです。

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● 事務局より
<第3回総会>
  日時:7月4日(木)18:30より           
  場所:県民サポートセンター 402室
   (JR横浜駅西口より徒歩約5分)      

  ◇お話:工藤 昇弁護士 
  ◇活動報告 & 活動方針  
  ◇会場からのQ&A
 

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<編集後記>
風薫る五月です。山々には若芽が柔らかく揺れ、風も萌黄色になっています。皆様には
いかがお過ごしでしょうか。
自然の営みが、新しい命を謳歌しているとき、世界のあちこちでは、正義の名のもとに
武器が使われ、破壊と殺戮が繰り返されています。翻って日本を見ると、これまた、国
を守るため個人を守るためという大義名分がふりかざされて、危ない道に進もうとして
います。いずれにしても、苦しむのはいつも一般の人々ですよね。
  日本の中の犯罪も一向に減らず、警察の「不祥事」も日常的なニュースになってき
ています。こんな社会を、地球を、子ども達に残したら、私たち大人は、みな大罪人で
す。
今、一人一人が、意識して動かないと、本当に手遅れになってしまいます。
木の芽どき、眠れない夜が続きます。(N)

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